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第一五話

間に合いました。

 ゲームをしましょう。

 それはどこかこの場に似つかわしくないような響きだ。

 いつの間にか目の前にテーブルが置かれている。

 そしてそこにはカードが積まれている。

 何となく数えると十枚ほどだ。


「一つ質問いいか?」


()()ですねぇ」


 どこか幼さすら感じられるほど柔らかく笑う。

 しかしその内容は気を引き締めるのに足りるものだった。


「ルールは大谷くんがした質問には必ず答えます、嘘はつかない、ですけど()()()()()()()知識があります」


「……終わる、とは?」


 くすり。

 と小さく笑う、その表情は神様のように達観している。


「世界は破滅します、世界中の人が起きない眠りに落ちます」


「は? どうや――」


 そこでさっきの相手の言葉を思い出す。

 聞いたら終わる知識。

 それが能力の内容だったらそれでアウトだ。

 だから慌てて口をふさぐ。


「いい判断ですねぇ」


 大人が子供の成長を喜ぶような表情だ。

 そしてその表情からはさっきの質問がアウトなのかどうかは見て取れない。

 心臓が強く脈打つ。

 質問しないと話は進まない。

 そもそも時間切れがあるかどうかも()()()()()()()()()()


「っぁ――」


「何ですか?」


 聞くべきことを考える。

 敗北条件だけ告げて勝利条件を告げないのは公平ではない。

 だから大丈夫だ。

 そう思うがうまく言葉が生まれない。

 例えば意図を聞きだすくらいなら大丈夫だ。

 そう考えてゆっくり息を整えて、なんとか言葉を絞り出す。


「なんのつもりだ」


 それに対して相手は笑みを浮かべる。

 勝利を確信した表情だ。


「それは――」


「あ!! ダメだ!! 撤回する!!」


「賢明ですねぇ」


 すぐに言葉を引っ込める。

 その様子を見て胸をなでおろす。

 勝利条件である知識を伝える事。

 なんて言われたらそこで終わっていた。

 これは質問の落とし穴を避けながら、ゴールに向かう言葉の迷路だ。

 迂闊な質問を選ぶと突き落としてくる。

 だから相手の答えを制限する必要がある


「答えは、ハイかイイエで答えてほしい」


 軽く眉を上げてうなずいた。

 とりあえずこれでしばらくは大丈夫だとおもう。

 そこで手から鈍いが強い痛みを感じる。


「あ、っつぅ……」


 知らない間に強く握りしめていたらしく手の平には爪の跡がはっきり残っている。

 するとその手をつかまれる。

 驚いて引こうとするが全く動かない。


「なにを!?」


 と言ったところで一つウインクをされる。

 口元には悪戯っぽい笑みが浮かんでおり、毒気のない様子に一瞬呆ける。

 ひんやりとしたその手は心地よい。

 そうして離されると傷痕は消えている。


「……すまん」


 俺の言葉に軽く頭を下げてくる。

 おそらくハイかイイエでしか今は言うつもりがないのだ。

 その感謝とは別に質問を考えてぶつける。


「俺の勝利条件はあるのか?」


「ハイ」


 頷かれただからとりあえず安心する。

 ここでイイエと言われたらどうしようかと思っていた。

 少し考える。

 これが達成不能なことなら無駄に時間だけすごす。


「それは俺が達成可能な事か? 時間が長く必要だったり、何らかの矛盾があったりするという事がないかだ」


「はい」


 つまりゲームとしてはそこまで理不尽ではないという事だ。

 落ち着いて椅子に深く腰掛ける。

 そうすると何か違和感を感じる。

 何がどうだというわけはないが漠然と何かが違うという思いが浮かぶ。


「何だ……」


 相手は首をかしげてじっと見てくる。

 じわじわと不安が浮かぶ。

 一つ深呼吸をする。

 見るとテーブルの上がおかしい。

 カードの数が減っているように見える。

 じっくり数えると七枚だ。

 前に見たときは十枚ほどだったのに何枚か消えている。

 あくまで予想だが質問回数が決まっているタイプだ。

 つまり――


「質問を浪費した可能性がある……」


 質問にとられかねないがこれはどちらでも答えられる可能性があるので曖昧な笑みを浮かべている。

 おそらく答えた質問の分カードは減っていくという事だろう。

 このままハイかイイエで勝利条件を達成できるならいい。

 だが、俺から頼むことでその回答形式にしてもらったのだ。

 その可能性は低いだろう。

 気を引き締め直す。


「ハイかイイエで答えるのはもうやめてもらってもいいか?」


「良いですよ~」


 軽い調子で了承されたので安心する。

 そしてカードの数は変わっていない。

 それを手に取りテーブルに一枚ずつ並べる数を一目で把握するためだ。

 そして先ほどのやり取りで理解する。

 了承された頼みはカウント外だ。

 なのでもう一つ頼みごとをする。


「俺の敗北条件は聞いたからルール説明を頼む」


「ふぅ、やっとですね」


 相手は手を組み話し始める。

 表情的にはどこか悪戯を思いついたかのように楽しそうな笑みだ。


「ルール説明を全部聞かないまま勝手に始めたからあわてていたんですよ」


「そうか? どう見ても楽しんでいたぞ」


「うーん、まぁ、これはおまけしておきましょう」


 あ。

 と思う。

 質問にとられかねない迂闊な言葉だった。

 自分の迂闊さに頭を抱える。


「ふふ、かわいいですねぇ」


 その余裕を持った態度に睨み返す。

 それをクスクスと笑われる。


「では改めてルール説明に移りますね」


 そうしてようやくゲームに移った。

明日も頑張ります。

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