第一三話
少し遅れました。
クラスのほとんど――いや、教師も含めて学校の人間全員がどこか浮足立っている気がする。
誰もが今起きている異常事態への解決、せめて何か情報を欲しているように休み時間には隠れてスマホをいじっている人間の割合が普段より多い。
「不安だねー」
「ああ」
多少は知っているからこそ不安になる。
何も知らなかったらそれこそ事故や病気を疑っていただろう。
しかし俺は明確な攻撃であることが想定できる程度には情報を持っている。
何らかの方向性があると考えられるために何かできることがあるのではないかと余計なことばかり考えてしまう。
昼休みも上の空でニュースサイトを見て回ってしまう。
そうしているとガーガからのメッセージが入る。
すぐさま返事を行い、人目がない場所に移動する。
「早いな、アモリ」
不審に思われない程度の早足で敷地の隅に移動すると、すでにガーガが待機していた。
その口調から察するに少し驚いているようだ。
ガーガのその言葉に正直に不安を漏らす。
「何が起きているかわからないからな、そして何もできない」
「……その気持ちはわからないでもない、ただ今は耐えてほしい」
「ま、わかっている」
結局陽川とガーガに任せないといけないのは理解しているのでぼやくのはそれだけにしておく。
頭を切り替えてガーガに質問する。
「それで俺に連絡してきた理由はなんだ?」
「ああ、手掛かりが欲しくてな」
「手掛かり?」
考えてみるがガーガが欲しがるような話はすぐには思い浮かばない。
首を傾げ考え込んでいると、ガーガが話しかけてくる。
俺に余計なプレッシャーを与えないためか口調はあくまで柔らかい。
「ああ、取り込まれかけた後でかえってこれたのはアモリだけなんだ」
「なるほど……だとしてもどこから話せばいいのか」
腕を組み悩む。
何を話せばいいのかがわからないからだ。
そこでガーガがすかさず話しかけてきた。
「大丈夫だ、ガーガが質問するからそれに答えてくれればいい」
「ああ、わかった」
ガーガの言葉に内心ほっとしながらうなずく。
その様子にガーガは満足げにうなずいてから話始めた。
最初はそれこそ昨日の夕飯メニューなどから始まり、体調や昨日木下とやり取りしたメッセージなど多岐にわたる。
「――で、寝たのは何時くらいだ?」
「寝床に入った時間は11時まえくらいだったかな? ガーガが出て行った後もネットを見回っていた」
「ずいぶん遅いな」
言われてみれば確かに遅い気がしないでもない。
だが特別に夜更かしかと言われたら、そういう気はしない。
ちゃんと話をしたわけではないがこれくらいの夜更かしはするものだと思っている。
「遅いと言われれば遅いが、大体こんなものじゃないか?」
「いや、陽川は昨日のそれくらいの時間なら寝ていたぞ」
とガーガはそこで何かに気付く。
「待て、寝床に入った時間はわかった、じゃあ眠った時間は何時だ?」
「……一時は超えていないと思う」
その言葉を聞いてガーガは何かが思いついたようだ。
「もしかしたら……」
「もしかしたら何か思いついたのか?」
食い気味に質問したので若干ガーガがひいている。
が、そのことを無視して再度同じことを問いかける。
「就寝時間が関係しているかもしれない」
「もしかして何か関係がありそうなのか?」
俺の問いかけにガーガはうなずいた。
俺の方を見ながら話しかけてくる。
「寝床で死んだように眠っている人間たちはには聞き取りはできなかった、だが眠気にがないユミたちはどうやら流早めに眠っていた」
ガーガの言葉に集中する。
「そしてアモリお前は明らかに就寝時間が遅かった、他に理由があるかもしれないが可能性は高い」
ガーガはそこでいったん言葉を切って話す。
「夜更かししたら遅くまで眠ってしまうだろう?」
「……」
ガーガの言葉を受けてじっくりと考える。
その後で一つうなずく。
「言われてみればそんな気もする」
木下が途中でメッセージのやり取りを打ち切ってきた。
あれがもしすぐにやらないといけない家事が入ったためだったら、確かに遅くまで起きていた可能性は高い。
それをフォローするようにガーガが話してくる。
「フタバはアモリとのやり取りの後、翌日の食事や家事の仕込みをしていた」
その目は俺をじっと見守りながら話してくる。
一旦ことばを切ったのを確認してうなずいた。
その反応に対してガーガもゆっくりと口を開く。
「寝床に入ったのは間違いなく零時を超えていた」
「っ!?」
その新たな情報に一瞬思考が固まる。
覚悟をしていたとはいえあたらめて言われるとやはりズシリとくるものがる。
「その――」
「アモリ……すまん!!」
ガーガはそれだけ言うとあたりが急に真っ白になる。
煙幕に近い物を発生させたらしい。
「ごほっ、ごほっ」
若干むせながら煙幕が晴れるまでじっと待つ。
煙幕が晴れたら、ガーガが居た場所を見るともう影も姿もなかった。
「まぁ、逃げるために煙幕を張ったんだから当たり前か」
そう誰に言うでもなくつぶやく。
いきなり発生した煙幕が気づかれる前にその場を離れ、午後の授業に備えることにした。
明日は20時代にに投下したいです。