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第一一二話

できました。

 道を歩いてゆくと向こうから声が聞こえる。


「見つけた!!」


 服装からすると陽川だ。

 見つけた状態から攻撃を行わなかったのは俺がいたからだろう。


「離してくれる?」


 と硬い声で陽川はヤヌスに問いかける。

 それに対してヤヌスは意地の悪い笑みを浮かべる。


「そうしてもいいけど、この体ごとぼくを破壊する覚悟はあるのかい?」


 と言いながらより強く俺の体を引き寄せた。

 そんな挑発をしながら言葉を続ける。


「ぼくだけを狙って破壊することはできないそうだろう?」


 笑みすら浮かべている。

 だが陽川は弓を構え引く。

 その顔からは表情が抜け落ちただまっすぐ見ている。

 陽川の目は本気だ。

 それを見たヤヌスは肩をすくめ俺を開放する。


「切り捨てるのか、自信があるのかは分からないけど放した方が得策だね」


 そうして距離を開けて構える。

 すでに武器である像は浮かんでいる。

 だがその顔色は優れない。


「行くよ」


 そんな軽い声と共に陽川が一発発射する。

 それは捻じれるように細く鋭くなる。


「くっ!?」


 慌てた様子でヤヌスの像は右手から同じような矢を放つ。

 ここでようやく気付いた。


「コピーか」


 能力的にはわかっているだけでも三つ。

 刃物の発射、空間への直接攻撃、そして光の矢。

 それらはリオン、アン、陽川の能力だ。

 だからあの場で攻撃に参加したのは最小限だったのだ。

 攻撃に参加した存在が増えれば手札が増えるので参加するわけにはいかなかった。

 特に弱っている人間がいる状態で陽川の高火力の攻撃は特に危険だった。

 だが、今は一対一。

 純粋な力比べになる。


「つまり――」


 ぶつかり合った矢は片方が砕け散り、もう片方が割れながらも直進する。


「やっぱりな」


 避けたのはヤヌスだ。

 後に跳び距離を取る。

 一瞬前までいた場所に着弾した矢は炸裂しクレーターを作る。


「やっぱり相性悪いねぇ」


「……」


 表情を引き締めたまま陽川はまた弓を引く。

 そして光で作られた矢がつがえられる。

 それに対応してヤヌスの像が右の掌に同様の矢を作り浮かべる。

 さっきの攻撃のやり取りでわかったのがヤヌスは威力をコピーできるわけではないという事だ。

 つまり威力特化の陽川と同時に撃ち合った場合、威力負けで倒されるという事だろう。


「ソル? もう一度言うがボクごのこの体を壊すつもりか?」


 その言葉を陽川は否定する。

 ただ視線はじっとヤヌスを見据えたままだ。


「違う、中だけを撃ちぬく」


 その言葉を聞いてヤヌスが笑う。


「じゃあフルパワーじゃない!!」


 その言葉と同時にヤヌスが矢を放つ。

 それに合わせて陽川も放ち。

 その矢はさっきと同じようにぶつかりあい。

 陽川の矢は割れる事すらなくヤヌスの矢を破壊する。


「はぁっ!?」


 抗議に近い声をヤヌスが上げた。

 まるで話が違うとでもいうようだ。

 それに対して陽川が何でもないことのように話す。


「この矢がそうだと言っていないし――」


 ヤヌスが再度避けたのを確認して、素早く弓を引いて矢を放つ。


「フルパワーとも言っていない」


 その矢は即座に数十に分裂、それぞれがさっきの矢と同じくらいの光量だ。


「っ!?」


 両手に矢を生み出し空を飛びながら連射しいくつか破壊する。

 が、圧倒的に処理速度が足りないようで連続して直撃する。


「腕、よすぎ」


 像は各部がひしゃげ、ねじくれ、穴が開ている。

 それでもかろうじて人型は保っている。


「もう少しかな?」


 と陽川は落ち着いてまた弓を引いた。

 ヤヌスは一度鼻を鳴らした。

 すると逆再生のように像が修復される。


「まだまだ」


 と口にして今度は両手に矢を生み出した。

 一呼吸見合い。


「ここ!!」


 と陽川が一発放つ。

 それに対してヤヌスは左の一発を放つ。

 これは直接当たらずほんの少し手前で破裂した。

 そのせいで軌道がずれたのか外れた。

 続いて右の一撃を放つ。


「なるほど」


 弓を引くという一動作が必要なため陽川はほんの少しだがヤヌスの二連打に追い付けない。

 だが落ち着いて陽川は弓を引き、打ち返す。

 そのコースは迎撃のようだ。


「かかった!!」


 ヤヌスは嬉しそうに笑う。

 ヤヌスの矢は途中で一部が爆発、軌道を変更し迎撃されるルートから外れる。


「違う」


 陽川は落ち着いて話す。

 同時に陽川の矢は破裂。

 爆風でヤヌスの矢を破壊する。


「く!!」


 ヤヌスがうめく。

 それもそのはずだ、矢の再装填自体は陽川の方が早い。

 一本ずつ生まれる前に陽川の矢が迫る。


「くっそ!!」


 右の矢を握りつぶしその場で暴発。

 右腕を犠牲にして左に大きく動く。

 またその爆発で陽川の矢が大きくスピードダウンする。


「避けた!!」


 そこで左の腕に一本矢が生まれる。

 その顔には凌いだことへの喜びが見える。


「あまい」


 だが陽川は断言し、もう一発放つ。

 それはヤヌスの方ではなく、避けられた矢の方だ。


「どこに撃ってるんだ!! あせったか――ってはぁっ!?」


 素早く突き進んだ矢は遅くなった矢にぶつかり、甲高い音を立てて跳弾した。

 それはよろめくことなくヤヌスに向かう。

 曲がった角度はかなりの急角度だ。


「物理法則考えろ!?」


 ヤヌスはそう叫び、左の矢を放つがあまりに近い。


「くっそがぁぁ!!」


 爆発した土煙の中からそんな叫びが聞こえた。

明日も頑張ります。

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