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第一〇七話

出来ました。

 各神話におけるもっとも強力な軍神は主神であるという話をしたが、他方もう一つ評価が入るモノがある。それはありきたりな言葉でいえその神が持つ規模だ。体の大きさ、関わっている範囲など様々な言い方はできるが最大の神は何かともいえるだろう。そうなったときまず挙げられるのが神話内で巨大さを記された存在だろう。だが、一つそれらすらも超える巨大さを持つ存在がありうる。舞台である世界を作り上げた存在すなわち国生みを行った大地母神だ。えてしてそれらの大地母神はその体を世界の素材とされることがままある。つまりどれほど巨大と謳われようと、世界そのもである大地母神よりは小さいと考えられる。また、世界そのものであるが故神話すべてに関係しているともいえ実際の巨大さと同様に影響力もまた最大であると言えるだろう。 


     ――原戸 寺目『隠された信仰とその軌跡――カミヤドリを追って』


=====================================

 血霞が吹きあがった。


「あ  ぁぁ――」


 増殖速度が目に見えて落ちたビーナスはリオンに撃破された。

 そのあと向かったのはユピテルだ。


「え?」


 その判断に驚く。

 一番強い相手に向かうのはマズイ気がする


「いや、あれでいい」


 とガーガからのフォローが入る。


「ヘラとの戦いはまだ持つが、ユピテルにはビーナスに振られていた分が上乗せされる可能性がある」


「ということは?」


「ソルが一瞬でやられるかもしれないってこと」


 顔から血の気が引く。

 強化されたら最強戦力の陽川が落とされる。

 そうなればあとは各個撃破されるだけだ。


「ヘラを先に倒すのは? ってそうか三対一で拮抗していたのか」


「そう、今はじわじわ押されているがまだ持つ、だからユピテルを倒す方を優先する」


 二人がかりでも勝てるかどうかはわからないだろう。

 だがそれでもやらないと負けるのだ。

 祈るような気持ちで推移を見守る。

 瞬きするほど時間でユピテルに隣接している。

 そこは読んでいたのか雷で迎撃される。

 が、リオンはそれを避けた。


「なかなかいい布陣だ」


「なんでだ?」


「単純に至近距離には雷を打ち込むのは難しいんでしょ、フルパワーで打ち込めばユピテル自身ただじゃすまないしね」


 実際ユピテルは戦いにくそうだ。

 これが陽川だけか、リオンだけならもっと楽だろう。

 だが、遠距離高火力と中近距離多段が組み合わさると非常に戦いづらそうだ。

 陽川に攻撃を仕掛けるには多少ためが必要で、その隙にリオンが斬りかかる。

 リオンを迎撃するなら陽川のためが入った攻撃が飛んでくる。


「これはいけるか?」


 かみ合わさっているのかどちらにも攻めあぐねているようだ。

 ヘラも少し焦っているようだ。


「もう!! 恋人の仲を邪魔すると天罰がくだりますよ!!」


「神様が言うと怖いでずねぇ」


「やってもいいけど、まずは私たちを超えてからね」


 両手どころか両足も血だらけになったヒュプノスが語り掛ける。

 その背から蟹の甲羅にかかと落としをアンが入れる。

 命中した場所がえぐられる。

 焦りが出て来たのかクリーンヒットが入り、蟹がふらつく。

 どうやら頭脳にあたる部分をえぐられたらしい。


「仕方がないですね」


 どこか困ったようにため息をついて、ユピテルに呼びかける。


「私に向かって撃ってきて」


 その言葉を聞いてさすがにユピテルも驚く。

 がすぐに深くうなずいたようだ。

 大きく上昇し距離を取る。

 そのせいでリオンの攻撃は空振りした。

 だが、逆に陽川は狙いをよく付けて弓を引いている

 ユピテルは頭上に両腕を掲げな力を貯めている。

 すぐに巨大な青白く輝く雷の塊のような物が浮かぶ。

 が、じっくり貯めたのは陽川も同じだ。

 そして先に放ったのは――


「陽川か!!」


 空を引き裂くような光がユピテルに向かい着弾する。

 もう一つの太陽のようなまばゆい光が空に生まれた。


「やったか!?」


「ガーガ!? それフラグ!!」


 とセレネの突っ込みが入った後だ。

 光の向こうから現れたのは体中が焼け焦げたユピテルだ。

 その口の端には強がりのように笑みが浮かんでいる。

 そしてその手には雷の塊だ。


「行くぞぉ!!」


 空気を揺らす巨大な叫びが聞こえる。

 それは獣の咆哮のようだ。

 投げられたそれは進むうちに巨大化しヘラに向かう。

 それに対して余裕の笑みを浮かべたヘラはヒュプノスに組み付いた。


「死ぬつもりですかぁ!?」


「ふふ、どうでしょうね?」


 それを助けようとアンが近づいた時だ。

 蟹が全身を使ってアンを抑え込む。


「くっ!! 次元をわたって――」


 と言ったときに着弾した。

 その要撃で吹き飛ばされる。

 雷光が晴れたとき見えたのは、まず見えたのは半壊した蟹だ。

 ブクブクと泡を吹きながら焼かれて爆ぜた断面からでたらめに足を生やしだす。

 がその動きはどこまでも弱々しい。

 次に立ち上がったのがヘラだと思う。

 その体は死体一歩手前で焼け焦げていない場所など存在せず、かろうじて人型にしか見えない。


「か  くの ちがいね?」


 と弱々しくつぶやきながら地面から何かを引き抜くように放り投げた。

 一人はその巨大さからヒュプノスだ。

 体の片側が消し飛んでいる。

 理由はわからないが残された部分は損傷が少ない。

 もうひとつはアンだ。

 体中が火傷に覆われており動くことはできそうにない。


「さああなた、やって!!」


 声を張り、ユピテルに向かう。

 ユピテルは一つうなずき。

 両腕に一つずつさっきと同じ大きさの球を作る。

 最後の力を全部渡したのかもしれない。

 そしてユピテルは二つを間髪置かず陽川とリオンに投げて――


 着弾した。

明日も頑張ります。

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