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第一〇五話

出来ました。

「それにしても空間の補強か」


 しみじみとつぶやく。


「そんなことをおこなう意味はあったんだろうか?」


 結局陽川が力づくでぶち抜いて出て来た形だからだ。

 しか、ガーガがどうにも歯切れの悪いことを言い出す。


「そこなんだが……」


「どうしたガーガ?」


「普通に考えれば最初ヒビを入れられたから補強したと考えるべきなんだが」


 何かを考えているようで、少しだけ時間が経ったとにようやく話す。


「脆かった気がするのだ」


「脆い?」


 ああ。

 とガーガがうなずいた。

 だが俺はうまく理解できていない。


「まて、ビーナスの体を使ってここを強化した可能性があるんだよな」


「ああ」


「確かに侵入に対する強化はされている様子はないね」


 そこでセレネが割り込んでくる。

 そしてその内容に引っかかる。


「別のところが強くなっているのか?」


「そう、脱出する方が難しくなってる」


「……ユピテルはよほど自信があるのだな」


 ガーガが若干げんなりとしながら口に出した。


「ここに誘い込んで倒すつもりだったのか」


 なのでセレネに問いかける。


「今すぐ全員で逃げられるか?」


「放っておけないというのもあるけれど、不可能だね」


 端的に言われてしまい頭を抱える。

 現状どこにも穴が無さそうだからだ。


「でも、何かあるはず」


「うーん」


 三人で顔を付き合わせ考える。


「ビーナスは確かにおかしいんだよね、あんな量の生物を間断なく生み出すなんて」


「……外からエネルギー補給を受けている?」


 そこでふとアあることを思だす。


「その可能性は高いかもしれないな」


 とガーガがつぶやく。


「そしておそらくヘラの能力がそれかもしれない」


「……確かにそうだとすると色々辻褄が合うね」


 とセレネが同意する。


「ユピテルとビーナス両方に補給をしていて、その補給を行う条件がきびしいから空間を作って、出るのがほぼ不可能な場所にしたんじゃない?」


「という事はビーナスを最初から餌にするつもりで早乙女をここに連れ込んだのか」


 三人で顔を見合わせる。

 段々と何かがつながってきた。


「アンは元々はヘルメスにするつもりだったらしい、で能力は次元だろうと泳ぐことらしい、なら役目は外から目標を連れてくることか」


「……かなり本気で勝つつもりだったみたい」


 セレネがそう漏らした。

 その言葉に俺もうなずいた。


「となるとヘラを狙いたいけど……」


 陽川もリオンもじわじわと押されている。

 向こうに疲弊が出ていないというのはなかなか厳しいらしい。


「実際はまだそんなに時間はたっていないがな」


「それはわかるけど、俺たちが加勢してどうにかなる相手じゃないだろう」


「ああ」


 頷かれる。

 実際しゃしゃり出てヘラに指一本でも触れることができる気はしない。


「ならやっぱりビーナスか……」


「一匹だけなら取り押さえることはできるね」


 なにか鑑賞できることは確かだが、相手は数十体じゃ効かない規模だ。

 あまり意味がある風にも思えない。


「それにしても、次々に補給対象を変えれるんだな」


「……どういう――ああ、そういう事か」


 ガーガは話している間に納得した。

 セレネもまた同じくらいの時間で俺の言葉の内容を把握できたようで話始める。


「倒されても増えるのはヘラからの補給があるからだけど、残された本体が毎回違うはずなのに問題なく補給されているってことでしょ?」


「ああ」


 まぁ、神様だからと言われたらそれまでだが完全ランダムで出来ているというのはちょっと不自然だ。


「ガーガも確かにおかしいと思う、あまりにスムーズにできている」


「ならそこが突破口だな」


 全員の考えが一致する。

 違和感のある場所にはどこか無理が生じているはずなのだ。


「……普通に考えるとヘラから補給を受けている奴――親っていえばいいかな? その親が代わっていないんだと思う」


「つまり親は狙われない場所に隠れているという事だな」


「その可能性は高い、狙われるような奴ならば一度くらいは倒されているはずだ」


 ガーガの言葉を聞いてじっと考える。


「狙われない場所か……」


 この場所を構成している物はシンプルだ。

 岩場をもつ海岸線。

 少し離れた場所には海はある。

 砂浜にヘラと蟹、それと戦うヒュプノスとアン。

 岩場と砂浜の境界辺りでビーナスとリオン。

 空にユピテルと陽川だ。

 ユピテルは最初地面にいたがテンションが上がったのかいつの間にか空を飛んでいる。


「どこに隠れているんだ?」


「……最低限、戦いが繰り広げられている所ではないな」


 ガーガの言葉にうなずく。

 流れ弾で被害を負う可能性があるからだ。

 そうして明らかに不自然場所に隠れていたなら一応のため追撃をかけるのはほぼ間違いないだろう。


「なら場所は一つか」


 海だ。

 そこは誰もいないので一切注意を向けられていない。

 つまり安全に隠れることができているという事だ。


「ならあとは探すだけだな」


 しかし問題は目印もないのに探し出せるのかという事だ。

 特にビーナスは自らの体を変形させることができる。

 魚になって逃げられたら追いつけない。


「ならセレネに任せて」


 と胸を張って言い切った。

 なのでうなずきつつ――


「時間がないから、そこまで言うなら任せた、ガーガ俺はどうすればいい?」


「とどめはガーガがさす、何とか一瞬だけでも動きを止めてほしい」


 結構な無茶を言われた。

 だが、セレネがウィンクする。


「セレネがサポートするからドーンとやっちゃって」


「わかった」


 心配をする暇はもうない。

 ガーガとセレネからやってほしいと言われたのだからやるしかないのだ。

 そう腹をくくり海に向かって走り始めた。

明日も頑張ります。

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