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第一〇四話

出来ました

 ビーナスを見ていたら違和感がある。


「……なんか妙だな?」


「何がだ?」


「ビーナスだよ」


 姿を見たのはこれで二度目だし、戦闘風景なんて初見だ。

 だがどうしてもぬぐえない違和感が頭に引っかかる。


「無視できないモノなんだが……」


 ここで前に見た時を思い出す。

 すると思い当たった。


「そうか、大きさだ」


「大きさ? 何が違うの?」


 セレネの言葉に一言で返す。


「小さいんだ、前に見たときより」


 前に見たときは象よりも巨大な代物だった。

 だが今は人の背丈位だ。

 そのことをガーガとセレネに伝えると微妙そうだ。


「ユピテルと戦ってその結果じゃないのか?」


「いや、ビーナスはウサギから巨大化して今のサイズに戻ったんだぞ、あの大きさで止める理由がない」


「じゃあ、機能制限されているとか? ありそうじゃない?」


 セレネのその言葉に気付かされる。


「あ、そうか、逆らわないようにってところか」


 そうなると気にしすぎだったという事になる。

 が、今度はガーガが否定してくる。


「いや、ユピテルがそんな小さいことを気にするとは思えない」


 その言葉で不思議に思う。


「知り合いみたいなセリフだな?」


 にわかに湧いた疑念をぶつける。

 するとガーガは何でもない風に答える。


「今までの長い戦いで何度も現れた記録があるからな」


「なるほど」


 そう言われたら納得できる。

 前に出て来た時もデカい事をやらかしたのだろう。

 そうしたとき巻き込まれた人間やそれこそ魔法少女に対してすらあの鷹揚な態度で相手をしていたのだろう。


「となると何らかの理由があってあの大きさになっているのか」


「そう考えるとあの背丈を超える生き物ってほぼいないよね」


 言われてよく観察するが、確かに象等の人から比べると圧倒的に巨大な生物はいない。

 どれこれもビーナスと同じくらいの背丈までだ。


「確かにどこか不自然だな」


「……なにかあるでしょこれ」


 不自然な事には何か理由がある。

 それは突破口になり得るものかもしれない。


「問題は行動原理が普通とは明確に違う事なんだよなぁ」


 ぼやく。

 今まで感情らしいものは何も見せず、淡々と襲ってくるような印象を持つ相手だ。


「とりあえずわかることから並べていこう」


 ガーガがまとめに入る。


「まず生み出せる生物の数はおそらく上限はない、視界いっぱいに呼び出すことも可能だろう」


「まぁ、だろうな」


 ガーガの言葉にうなずく。

 一体の大きさは制限されるが、生み出すとなるとアッという間に埋め尽くしてくる。

 生み出しすぎないのはおそらく大量に生み出しすぎると身動きが取れないからだろう。

 そうなったらリオンにバラバラにされていく。

 それを避けるために生み出す数を制限しているのだろう。


「そしてどれかが残っていたらそいつが本体に変形して新たに生み出す」


 そこまで口にしてあることを閃く。


「そうか!!」


「なんだ? アモリ?」


「変形しているんだ、ビーナスが生み出している生物は中身は全部ビーナスだ」


 まくしたてるようにして話を続ける。


「だから大きさとしてビーナスまでしか生み出せないんだ」


「なるほどその可能性は0じゃないな」


「今のところは否定できる情報はないってところだね」


 とりあえず頭から否定されたわけではないのでよしとする。

 どちらにしろ小さくなった理由を説明できていないのでそこまでだ。


「となると小さくなった理由かぁ」


「気分はないよねぇ、基本的に体を小さくする理由なんてないから」


 セレネと二人で考え込む。

 すると今度はガーガが思いついたように話す。


「最初にアモリが見た状態が肥大化していた可能性はないか?」


「その可能性は……」


 悩む。

 だが、改めてその時のことを思い出すとビーナスは動きが鈍重だった気がする。

 戦うことに適した大きさに自分を切り詰めていった可能性もないことはないだろう。


「低くはないと思う、最初に見たビーナスはあそこまで機敏に動けてなかった」


 視線を向けるのはビーナスとリオンの戦闘だ。

 襲い掛かってくる角を持つ動物の背を渡りながら至近距離でリオンが斬りかかる。

 ビーナスは一歩後ろに下がって表面に大量の動物を呼び出してぶちまける。

 それらをまとめてリオンは切り伏せた。

 だが一瞬動きが停滞したせいで避けられた。


「安定して戦うためにか」


「そうだと思う」


 頷きながら考え込んでいる様子だ。


「なら捨てた肉はどこに行ったんだ?」


「食べたとか?」


 セレネが完全い適当な答えを口にした。

 そうしたらガーガの様子が一変する。


「そうか!! 食べたんだ」


「ビーナスがか?」


 首をひねり聞き返す。

 しかしガーガは俺の俺の質問に首を振って否定する。


「ユピテルだ」


「ユピテルがか? 何をするんだ?」


 ガーガの視線は俺をじっと見ている。


「この世界の補強だ、おそらくだが」


「……ああ、そんなことも出来るんだな、どうやって作ったのかは具体的な方法はやめておく」


 若干げんなりしながらビーナスについての考察を深めていくことにした。

 おそらくだがビーナスには何か致命的な弱点がある気がする。

 それこそ非戦闘員3人でも何かできる気がするのだ。

 そう気を引き締めて会話に専念することにした。

明日も頑張ります。

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