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第一〇三話

できました。

「アモリ、少し借りるぞ」


 と言ってガーガが俺の頭に降りる。

 そしていうが早いか意識が遠のく。

 聞こえてくるのはガーガの声だ。

 変にクリアに聞こえてくる。


「いまアモリの脳に間借りさせてもらっている」


「は?」


 さすがに聞き返すがそれは口から出なかった。

 続いて視界の端にセレネが映りガーガに飛び乗った気がする。


「セレネも到着っと」


「もういいけどせめてガーガみたいに断れよ」


「えーでも一秒でも争う事態だし」


 クソ。

 と内心毒づくが、事実その通りだ。

 相手が切り替わり、すぐには潰されることはないだろう。

 だが、ユピテルとヘラの底は見えていない上にヘラは能力すら定かではない。

 乗っている蟹はあくまで武器なのでユピテルの雷のような能力を持っていてもおかしくない。


「この状態って高速で会話しているのに近いのか?」


「そうだ、ネムから聞いたがどうやら走馬燈レベルの集中が自由にできるんだろ?」


「自由って程でもないけど、こう、グッと世界が狭まるけどわかる範囲は広がる感じ」


 俺自身でもぼんやりとした説明を行う。

 その説明にセレネが割り込む。


「半信半疑だったけど本当だったんだ、なにしたの?」


「それは話せば長くなるが……」


 さすがにガーガが止めた。


「今はやめておけ、時間が惜しいのにそれでは本末転倒だ」


「はーい」


 その言葉にセレネが引き下がった。

 あまりそんな風には見えないがセレネもまた切羽詰まっているようだ。


「で、状況だがかなりまずい、言わなくてもわかっていると思うが」


「まぁねぇ」


「わかってる」


 どういう原理かは分からないが、周りの状況がなんとなくわかる。

 ユピテルと陽川の戦いは火力合戦に移っている。

 一発一発はユピテルの雷撃の方が上だが、陽川は連射が効くようだ。

 ユピテルの攻撃は多少ためが入る、その間に陽川は五発程度打ちこんで相殺している。

 おそらくユピテルはもっと貯めることも、速射も可能だろう。

 だが威力と連射速度の兼ね合いのようでどうにも攻めあぐねているようだ。

 それは陽川も同じ様子で貯め打ちにあたる行動を行っていない。

 今のところは均衡を保っているが明確に違う物がある。

 顔色だ。


「ソルの方、なんか顔色悪いね」


「……慣れの差か……」


「ユピテルにここ前食い付けるほどのパワーだから、一瞬も気が抜けない戦闘を続けるのがなかったわけね」


「今更嘆いたところで仕方がないので、現状は持つという事で次」


 そしてヘラとの戦いだ。

 能力の感覚をいじることも無効化されているので、できるだけ前に出て攻撃を引き受けるように立ち回っている。

 そのせいか着ている服も所々が破れ、浅くない傷を受けている。

 アンは有効打を与えることができる能力を持っているのでヒュプノスの大きな体の陰から飛び出てヒットアウェイを繰り返している。

 が、蟹は案外機敏に動くので足の一本か二本程度しか持っていけない。

 その上で早回しのように足が生えてしまい元通りになる。

 その様子をヘラはどこか驚いた様子で見ている。


「ネムの方が突破されたらやられるな」


「蟹のくせに!!」


 と何やらセレネは不満げだ。

 そんなヘレネを無視して、感想を口にする。


「ヘラが動いていないのが怖いな」


「蟹の制御に全力を使っているのか、それとも余裕か……」


「ここも突破口なさそうだね」


 セレネがまとめたが、下手に刺激すると危険な気がする。

 なので最後のビーナスとの戦いに意識を向ける。


「……ん」


 リオンは扇状に囲んできた三桁はくだらない数の生物を前にして以前と顔色を変えた様子はない。

 落ち着いて腕を一振りすると大量の金串のような物が飛び、本数分の生物の足が地面に縫い付けられる。

 それは一瞬の拘束だが、、それだけで襲い掛かる生物の波の速さは二つに分けられた。

 まっすぐ突撃できたグループと一瞬足止めを喰らったグループだ。

 前者は後者を乗り越えるために少しだけ体勢を崩している。


「えい」


 そんな軽い声と共に腕をもう一振りする。

 今度の金串はそれぞれの生物の眉間狙いだ。

 体勢を崩した前者のグループは避けようとするがうまくいかずほとんどの眉間に突き刺さった。


「ア  ぁ」


 そんなうめき声がどこかから聞こえた。

 即死に近い状態になった生物たちが後者のグループの障害物になる。


「ぅん」


 そう呟いて、両手に金色に輝く剣を一本ずつもって生物たちの中に飛び込んだ。


「オ!?」


 ビーナスと思われるそんな声と共に、血と思われる液体と生物たちの残骸が飛び散った。

 飛び込み全力で暴れまわり、嵐のようにズタズタにしていく。

 通った後は血と残骸が残るだけで道を切り開くように見えた。


「ぁ   あぁ」


 と、かろうじて生き残った生物、馬とウサギ、そして虎がうめく。

 リオンは返す刀で残った生物を斬り捨てようとするが――


「く」


 小さくうめいた。

 斬り捨てるその瞬間に斬りかかった瞬間馬が前に出て割り込んだ。

 一発で首を斬り落としたが狙いがそらされた。

 続いて虎が飛び掛かる。

 慌てて剣を構え体ごとぶつかるようにして虎に剣を突き立てる。

 その隙にウサギは距離を取り、メキメキと音を立てて巨大化。

 人程度の大きさになりながら変形し、ビーナスに戻る。

 続いて斬り捨てられた生物が一度溶けて粘土のように形が変わりながら立ち上がる。


「   ぉ」


 振り出しにもどる。

 いや、規模的には後退したようにも見える。

 気力がそがれるだろう光景を前に俺たち三人は頭を抱えた。


「おいおい、どうする?」


「……これはマズイな」


「でも何とかしないと」


 きっと何かできるはず。

 そんな藁にもすがるような思いで知恵を出し合うことにする。

明日も頑張ります。

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