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第一〇二話

できました。

 その瞬間にたくさんの事が起きた。

 まず起きたのは破壊された空から三つの人影が出て来た。

 陽川、リオン、そしてヒュプノスの三人だ。

 続いて小さな影が二つとびだしてきた。


「まず一発!!」


 そんな掛け声ともに地面が爆発したように吹き飛ばされた。

 砂煙が煙幕となって俺たちとユピテルを遮った。

 その上で何かと打ち合っている金属音が連続し、どこかにかっさらわれる。

 相手はリオンだ。


「ん」


 と小さく笑って離れた場所に俺を下ろした。

 そのすぐわきにふたばもおろした。


「リベンジマッチですよぉ」


 という言葉と共に聞き覚えのある声がする。


「性懲りもなく来ましたね」


 薄れ始めた砂煙の奥に巨大な鋏を振り上げる影が見える。


「ふん」


 そんな声と共に電光が走り砂煙が吹き飛ばされる。


「小細工は無意味だ」


 閃光が走り目がくらむ。

 するとヒュプノスの立ち位置がずれていた。

 距離としては大したことはなくほんの数歩分だ。

 だが極限状態になるならそれが大きな差になるのだろう。


「やっぱり卑怯ですねぇ」


 とヒュプノスはつぶやく。

 同時に今も空を飛んでいる陽川が弓を引き、現れた矢を放つ。

 それはドンドン太くなる。

 それに対してユピテルは余裕の笑みを浮かべたまま悠然と立つ。

 すると雷がユピテルの体から発射される。

 一発では陽川の矢を相殺できなかったようで二発目まで打ち込んだ。

 しかしそれはなにかモーションを行って放ったわけではない。


「まさか二発も必要とはな……胸を張っていいぞ」


 するとユピテルの周囲にいくつもの輝く球体が浮かぶ。

 おそらくさっきまでの雷とは桁が違う威力だ。


「さあ、死ぬなよ」


 どこか俺たちを心配するような口調で攻撃を放ってきた。

 数は俺を抜いて四発。

 視界が雷の青白い光に満ちる。

 俺が狙われたわけじゃないが総毛立つ。


「あぶな――」


「もう一発!!」


 陽川はそう叫んでもう一度矢を放つ。

 それはさっき陽川が放ったものより力強く輝き四つに分裂。

 それそれの雷を破壊した。


「ほぅ……」


 さすがにこれにはユピテルも驚いたようで目を見開いた。

 そんな相殺が繰り広げられている下でヘラとリオン、ヒュプノス、アンの激突が起きた。

 数に勝る方が圧倒するかと思ったら違った。

 蟹ごと前に出てわざと囲まれるような位置に向かったようだ。

 その位置で三人が連携をとれないように戦っているようだ。

 続いてヘラはクスクスと笑いながら呼びかける。


「来なさい――」


 それはよく響く声だ。

 自信に満ちた声である名前を読んだ。


「ビーナス!!」


 空からナニカが落ちてくる。

 それは大きさがかなり小さくなったがつるりとした印象の見覚えのある存在だ。

 元々かなり巨大だったが、今は人位の大きさだ。


「ぁ  あ」


 と呻くような声を上げて表面が泡立ち、節足動物の足が生える。


「命が生まれる瞬間程美しいものはないですね」


 とヘラが話す間に次々に動物が生まれる。

 そしてそれらはどことなくビーナスと同じ質感を持っている。

 またそれ等の動物の大きさがおかしい。

 人ほどの大きさの蜂や、手の平大のワニなど作りと大きさがでたらめだ。


「数の解決か!?」


 そこでようやく言葉を発する。

 そして質感から嫌な予感がする。


「まさか、そいつらは全員、ビーナスか?」


 俺のその言葉に、三人からの攻撃を捌いているヘラがうなずいた。


「そうです、生まれた生物もまたビーナスです」


 さらりといい切られる。

 ただでえユピテルとヘラに四人で挑んでも攻めきれていないのに数に上回るビーナスだ。


「お ぉ」


 生み出された生物がそれぞれ伸びをする。

 まずい。

 そんな思いが頭の中に満ちる。


「リオン!!」


 と甲高い鋭い声がする。

 声の主はセレネだ。


「アンタがビーナスを何とかしなさい」


「ん」


 とうなずいて跳んだ。

 それに対応してヒュプノスとアンが前に出て離脱するのを手助けした。


「ソル!!」


 とガーガが陽川に呼びかける。

 一瞬どういうことかと思ったが、そういえば陽川の魔法少女としての名前はそっちだったと思い出す。

 おれのそんな事情は気にせずガーガは呼びかける。


「ここならフルパワーでも大丈夫だ」


 どうやらさっきまではあれでもセーブしていたらしい。

 その声を聞いてさすがにユピテルは苦笑を浮かべる。


「あのパワーでまだ全力ではなかったとはな」


 そんなことを言っているユピテルもまた余裕がある。

 ピリピリとした空気が満ちた空間で、また急速にそれぞれの位置取りが切り替わる。


「ぁ  ぉ」


 と呻くビーナスに金に輝くリオンが襲い掛かり、取り巻きをズタズタに引き裂き始めた。


「二人で押さえられるかしら?」


 とヘラは余裕の笑みを浮かべ。

 それに対してヒュプノスとアンは一瞬視線を交差させた後で同時にうなずく。


「ええ、そうですよぉ」


「足元をすくわれないようにね」


 ユピテルは自信に満ちた笑みのまま、バレーボール大の青白く輝く球体を作る。


「さて、さっきまでとはわけが違う」


 と言って放り投げる。

 球体は一瞬後に急加速して、肥大化と分裂が連続する。

 それに対して陽川は、一呼吸だけして矢をつがえ放った。

 放たれた矢もまた分裂と巨大化して相殺していき、絶え間なく光の矢と雷光が空を覆った。

明日も頑張ります。

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