第三十六骨 噛み骨
熊を見たことがあったのだろう。
動物の骨に詳しくはないが、一目でそれが熊の骨だと判別できた。
大きく手を広げて、立ち上がる姿は、骨となっても迫力は変わらない。
まさに地上最大の肉食獣だ。
（あれは、銃痕か？）
熊骨の額の真ん中に小さな穴が空いていた。
（猟銃かなにかで撃たれたのか？）
あの位置に攻撃すれば、仕留められるかもしれないが、正確に狙うのは難しい。
そして、熊の頭を倒したとしても、まだ終わらない可能性がある。
首の上に三つの頭。右に人間、左に犬の頭が生えていた。
さらに腹の部位には、五つの人の顔が固まってでている。
大きいのが二つ。男と女の頭蓋だ。
その下に小さい頭蓋が三つある。
見た感じ子供の骨に見えた。
（家族を襲って食べたのか？ そして、融合したのか？）
考えただけでも、胸糞が悪い。
他にも、両手両足に一つずつ、背中に三つほどの頭蓋がある。
（小さな村を襲って、人間を食い散らかしたのか）
なぜ、熊が食べた人間や犬と混ざり合ったのかはわからない。
だが、歪に繋がった骨には、美しさの欠片もなかった。
背骨ムチを構えて、戦闘態勢に入る。
（まずは熊の頭だ。それでも止まらないなら、全部の頭を砕いてやるっ）
増加され、長くなった背骨ムチなら立ち上がった熊骨の頭蓋にも届く。
俺は全力で熊骨に背骨ムチを振りかぶった。
ガブッ、と背骨ムチが噛みつかれる。
熊骨ではない。
左にある犬骨の頭蓋が噛み付いたのだ。
引っ張って取り戻そうとするが離さない。
（っ！！ まずいっ！！）
熊骨が右手骨を俺の頭蓋めがけて振り下ろす。
鋭い爪、そして人間の頭蓋が手の平に張り付いている。
がんっ、と寸前で、ゴリラアバラ盾でガードした。
だが、その盾に今度は人間の頭蓋が噛み付いて離れない。
（な、なんだっ、この状態はっ！？）
右手のムチ、左手の盾、どちらも、骨に噛みつかれ、身動きが取れない。
その状態で、さらに熊骨は左手骨を振り上げ襲ってくる。
（うっ、わぁああっ！！）
もう、ムチと盾を離すしかなかった。
噛まれたままの二つの武器を手放して、後方に下がる。
そこに、熊骨の攻撃が振り下ろされた。
俺が立っていた地面が、ドンっ、と粉砕される。
あんなものをまともに喰らったら、一撃で終わってしまう。
戦闘開始で、いきなり主戦力となる二つの武器を失った。
……カタカタカタカタ、と熊骨の腹にある五つの骨が歯を鳴らしている。
まさか、もう勝利を確信して、家族団欒を楽しんでいるのか？
（……なめるなよ）
素早く顎に手を持っていき、歯を抜いていく。
（その額にぶち込んでやる）
まだ、開発中だが、使うしかない。
俺は熊骨に向けて、必殺技、歯銃の構えをとった。
【骨骨メモ】
日付 ７日目
骨強化 ４回
追加骨 仙骨１ 牛角骨１ 腰椎５ 胸椎１２ 猿尾骨 １ 頚椎７
総合骨数 ２４３骨
武器 骨ヌンチャク 背骨ムチ（損失中） ゴリラアバラ盾（損失中）
必殺骨 歯銃（開発中）
保存砂骨 480グラム
現在の骨強度 銅貨程度
負傷箇所
全回復
第三十六骨です。
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追記
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