第三十五骨 異形骨
必殺技の開発に明け暮れていると、あっという間に時間は過ぎた。
(完成度はまだ30%ぐらいか。もっと早く、もっと正確に撃てるようにならないといけない)
必殺技、歯銃には、大きな欠点が二つある。
まず一つ目は歯の数が限られているということだ。
全部で28発しかないが、一度撃ってしまえば戦闘中は回収が不可能だ。
練習で何発か撃ってみたが、骨が散らばるこの穴で、小さな歯を探すのはかなり大変で時間がかかる。
そして、二つ目。
歯が硬いエナメル質で覆われているのは、噛むときに使う歯冠部の表面だ。
付根の部位はセメント質で、骨の硬さと変わらない。
真っ直ぐに正確に飛ばさないと、歯は欠けたり、砕けたりしてしまう。
練習で損傷した歯は、保存していた砂骨で回復させたが、これでは効率が悪い。
確実に真っ直ぐ飛ばし、エナメル質の面を敵に当てるようにならなければいけなかった。
(実戦ではまだ使えないか? いや、実戦で慣れていったほうがいいのか?)
一刻も早く必殺技を完成させることが、生き残るために必要だ。
敵がやってくるギリギリまで練習を繰り返す。
そして、いつものようにその時間はやってきた。
誰かが、放り投げたのか。
骨の塊らしき、大きなものが穴の上から落ちてきた。
(なんだ? アレは?)
思わず目を疑った。
いや目はないのだが、とにかく落ちてきた骨を理解できなかった。
(人間の骨? いや、違うっ、巨大すぎるっ)
それは人間よりも、遥かに大きい。
だが、確かにその頭には人間の頭蓋骨がついている。
(いや、違うぞ、人間だけじゃないっ!?)
それはあまりにも異質だった。
本来頭がある部位に三つの頭が混在している。
右に人の頭蓋。
そして、左に犬の頭蓋。
さらにそれよりも大きな頭蓋が真ん中にあった。
(なんだ、あれは? 熊かっ!)
巨大な身体と頭はおそらくは熊の骨だ。
そこに人間の骨と犬の骨が融合している。
カッ、カッ、カッ、と歯の鳴る音が聞こえてきた。
熊骨の身体中から、それは鳴っていた。
(こ、こいつ、至る所にっ!!)
それは骸の王とは違う。
追加された骨ではない。
熊骨の身体中に、溶けて混ざりあったように人の顔骨が張り付いている。
(融合したのか? 熊と人と犬の骨がっ!?)
異形。
恐らく、骨になってから強化されたわけではない。
生きている状態で、熊が人と犬を取り込んだのか。
四つ脚だった熊骨が立ち上がる。
3メートル近くはあるだろう。
熊骨が俺を睨むと、10以上の人間の顔骨と一匹の犬骨が、同時に俺を睨む。
この世のものとはおもえない骨に、俺は思わず顔を背けた。
【骨骨メモ】
日付 7日目
骨強化 4回
追加骨 仙骨1 牛角骨1 腰椎5 胸椎12 猿尾骨 1 頚椎7
総合骨数 243骨
武器 骨ヌンチャク 背骨ムチ ゴリラアバラ盾
必殺骨 歯銃(開発中)
保存砂骨 480グラム
現在の骨強度 銅貨程度
負傷箇所
全回復




