第三十三骨 墓骨
鎧骨の首は兜をかぶったまま、転がっていった。
フルフェイス型の兜を開けると、中から頭蓋骨が出てくる。
骨の強度は俺よりも低い。
やはり、武骨のような強化された骨ではなかった。
(いくら装備で身を固めても、中の骨が弱ければ意味がない)
鎧や鎖かたびら、そして剣があったとしても、それを扱うには、ある程度のスキルが必要だ。
(この鎧、そのまま使えるのか? 防御力はあがるが、動きは格段に鈍くなるな)
頭蓋骨の入った兜を持ちながら、そんなことを考えていると鎧骨の砂化が始まった。
(あっ)
どうやら、鎧のことを考える必要はなかったようだ。
骨と共に鎧や鎖かたびら、剣までも砂化していく。
(武骨の骨ヌンチャクが残ったのは、大部分が骨だったからか? ここでは骨以外の武器や防具は残らないのか?)
すべてが砂化して、螺旋状に纏わり付く。
頭蓋骨にヒビが入っているので、今回は保存せずに強化を受け入れる。
軽傷だった為、回復だけではなく、骨が強化されていった。
そして、最後に追加骨として、背骨の一番上の部分、7つの骨が合わさった頚椎だけが残る。
(もう何段階か強化しても大丈夫そうだな。骸の王は、この程度では見向きもしないだろう)
初日と六日目に現れたことから、骸の王は、五日ごとにこの部屋にやってくると推測する。
次に来るのは、十一日目だろうか。
床に刻んだ正の字が増えるたびにやってくる。
(わかりやすくて、いいじゃないか)
女骨は、骸の王を見た途端に襲い掛かった。
俺と違って、記憶が残っていて、何か恨みを持っていたのだろう。
だが、俺は感情に身を任せない。
女骨の仇であっても、冷静に分析する。
勝てる要素が今は1%もない。
そんな状態で戦うのはただの自殺行為だ。
首のなくなった女骨を見て思う。
彼女はもしかして、こんな姿になってまで生きていたくなかったのかもしれない。
すでに一番大切なものは奪われていたのだろう。
夢の中で彼女と手を繋ぐ小さい女の子を見た気がする。
きっと、それは女骨の娘だったのだろう。
女骨は、俺の恋人や妻ではなかった。
記憶の断片に残る俺と共に骨を研究していた男。
その男が女骨の夫である可能性が高い。
だが、女骨は俺にとって、きっとずっと一緒にいた大切な人だったのだろう。
地面の岩を砕き、穴を掘った。
そこに女骨を埋めて、周りにある骨を重ねて墓を作る。
(俺はまだ戦うよ。女骨)
生き残り、強くなり続ければ、きっといつか答えに辿り着く。
骸の王も、この穴も、そして、俺が骨になったことも、全部わかるはずだ。
女骨と共に見上げた月明かりが差し込む天井を一人で見る。
どれだけ悲しくても、骨の眼窩からは、何も流れてこなかった。
【骨骨メモ】
日付 6日目
骨強化 4回
追加骨 仙骨1 牛角骨1 腰椎5 胸椎12 猿尾骨 1 頚椎7
総合骨数 243骨
武器 骨ヌンチャク 背骨ムチ ゴリラアバラ盾
保存砂骨 500グラム
現在の骨強度 銅貨程度
負傷箇所
全回復
仲骨 女骨
死亡




