表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/45

第三十三骨 墓骨

 

 鎧骨の首は兜をかぶったまま、転がっていった。

 フルフェイス型の兜を開けると、中から頭蓋骨が出てくる。

 骨の強度は俺よりも低い。

 やはり、武骨ぶこつのような強化された骨ではなかった。


(いくら装備で身を固めても、中の骨が弱ければ意味がない)


 鎧や鎖かたびら、そして剣があったとしても、それを扱うには、ある程度のスキルが必要だ。


(この鎧、そのまま使えるのか? 防御力はあがるが、動きは格段に鈍くなるな)


 頭蓋骨の入った兜を持ちながら、そんなことを考えていると鎧骨の砂化が始まった。


(あっ)


 どうやら、鎧のことを考える必要はなかったようだ。

 骨と共に鎧や鎖かたびら、剣までも砂化していく。


(武骨の骨ヌンチャクが残ったのは、大部分が骨だったからか? ここでは骨以外の武器や防具は残らないのか?)


 すべてが砂化して、螺旋状に纏わり付く。

 頭蓋骨にヒビが入っているので、今回は保存せずに強化を受け入れる。

 軽傷だった為、回復だけではなく、骨が強化されていった。

 そして、最後に追加骨として、背骨の一番上の部分、7つの骨が合わさった頚椎けいついだけが残る。


(もう何段階か強化しても大丈夫そうだな。むくろの王は、この程度では見向きもしないだろう)


 初日と六日目に現れたことから、骸の王は、五日ごとにこの部屋にやってくると推測する。

 次に来るのは、十一日目だろうか。

 床に刻んだ正の字が増えるたびにやってくる。


(わかりやすくて、いいじゃないか)


 女骨じょこつは、骸の王を見た途端に襲い掛かった。

 俺と違って、記憶が残っていて、何か恨みを持っていたのだろう。

 だが、俺は感情に身を任せない。

 女骨のかたきであっても、冷静に分析する。

 勝てる要素が今は1%もない。

 そんな状態で戦うのはただの自殺行為だ。


 首のなくなった女骨を見て思う。

 彼女はもしかして、こんな姿になってまで生きていたくなかったのかもしれない。

 すでに一番大切なものは奪われていたのだろう。


 夢の中で彼女と手を繋ぐ小さい女の子を見た気がする。

 きっと、それは女骨の娘だったのだろう。


 女骨は、俺の恋人や妻ではなかった。

 記憶の断片に残る俺と共に骨を研究していた男。

 その男が女骨の夫である可能性が高い。

 だが、女骨は俺にとって、きっとずっと一緒にいた大切な人だったのだろう。


 地面の岩を砕き、穴を掘った。

 そこに女骨を埋めて、周りにある骨を重ねて墓を作る。


(俺はまだ戦うよ。女骨)


 生き残り、強くなり続ければ、きっといつか答えに辿り着く。

 骸の王も、この穴も、そして、俺が骨になったことも、全部わかるはずだ。


 女骨と共に見上げた月明かりが差し込む天井を一人で見る。


 どれだけ悲しくても、骨の眼窩がんかからは、何も流れてこなかった。





【骨骨メモ】


 日付 6日目

 骨強化 4回

 追加骨 仙骨せんこつ1 牛角骨うしつのぼね1 腰椎ようつい5 胸椎きょうつい12 猿尾骨 1 頚椎けいつい

 総合骨数 243骨

 武器 骨ヌンチャク 背骨ムチ ゴリラアバラシールド 

 保存砂骨 500グラム

 現在の骨強度 銅貨程度


 負傷箇所 

 全回復



 仲骨 女骨じょこつ


 死亡


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ