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第三十二骨 剣骨

 

 全身を鎧で守られているからといって無敵ではない。

 鍛えられた骨でも、そのスピードは格段に鈍る。

 剣の攻撃を盾で防ぐことは、そんなに難しいものではなかった。


 まったく有効打を放てない鎧骨が焦ったのか、剣はどんどんと大振りになっていく。


(リズムも一定だ。いける)


 装備は武骨ぶこつよりも整っているが、戦士としての質は格段に落ちる。

 この程度なら、狙えるはずだ。


 タイミングを合わせて、向かってきた剣をゴリラアバラシールドで払う。

 その衝撃で鎧骨が大きくバランスを崩した。


(今だっ)


 素早く剣を持った、鎧骨の右腕を掴む。

 そして、右肘の隙間に自らの右手骨を差し込み、中を探る。


(やはり、中に鎖かたびらを着ている。しかし、その上から関節球に触れるぞ)


 肘にある関節球に触れると、何をされるかわかったのか、鎧骨が俺を振り解こうと暴れだす。


 甲冑を装備した左腕で、俺の頭蓋骨をガンガンと殴ってきた。

 打撃を受けた俺の頭蓋骨にピシッ、と小さなヒビが入る。


(そんな程度ではひるまないっ!)


 構わず、右肘の関節球を上から握り潰す。

 剣を持った鎧骨の右手が肘から外れて地面に落ちた。

 同時に、その右手を拾って、鎧骨から素早く離れる。


 なくなった右肘の辺りを左手骨で触りながら、明らかに鎧骨が動揺していた。

 俺は拾った右手から剣を奪い、いらなくなった右手を投げ捨てる。


 ギッ、ギギッ、と鎧骨の頭部から歯軋りが聞こえてきた。

 思い入れのある剣なのか?

 悪いが使わせてもらうぞ。


 背骨ムチを前方の仙骨せんこつに戻し、奪った剣を両手に握る。

 フンッ、と振り上げて素振りすると、ヒュン、と剣が空気を切り裂いた。


(重たいが、なかなかいい剣だ。これなら、鎧の隙間を狙えば、鎖かたびらを貫ける)


 それを鎧骨も感じているのだろう。

 これまで、無造作に近づいて来た鎧骨が、俺を警戒して、動かなくなる。


(初日に会っていたら、なす術もなくやられていただろう。たが、残念だったな。くぐった修羅場の数が違う)


 穴から落とされる骨は、どうやって選ばれているのだろうか。

 中の状況など気にしていないのか。

 猿骨の大群やゴリラ骨に比べれば、鎧を着て、剣を持っただけの骨など、敵にはなりえない。


 動かなくなった鎧骨に、ゆっくりと近づいていく。


 ヤケクソになったのか。

 カカッ、と鎧骨が歯を鳴らし、俺に向かって突撃してくる。

 その背後に頭のなくなった女骨じょこつの遺骨が見えた。


(俺は生き残るぞ、女骨)


 そうだ。俺は知りたいんだ。

 この穴が何のためにあるのか。

 俺はなぜ骨になったのか。

 むくろの王はなんなのか。

 最後まで足掻あがいて、生き延びて、その謎をすべてを解明してやる。


 向かってくる鎧骨の首、その隙間に剣を差し込む。

 鎖かたびらを引き裂いて、スパンっ、と鎧骨の首を跳ね上げた。





【骨骨メモ】


 日付 6日目

 骨強化 3回

 追加骨 仙骨せんこつ1 牛角骨うしつのぼね1 腰椎ようつい5 胸椎きょうつい12 猿尾骨 1

 総合骨数 236骨

 武器 骨ヌンチャク 背骨ムチ ゴリラアバラシールド 

 保存砂骨 500グラム

 現在の骨強度 ひのきの棒レベル

 負傷箇所 

 頭蓋骨 亀裂骨折(小)



 仲骨 女骨じょこつ


 死亡


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