第三十一骨 鎧骨
骸の王にやられた女骨は砂化しなかった。
頭部のない身体は、いつまでも穴の中に残り続ける。
やはり、ここに散らばる骨の残骸は骸の王が壊したものだろう。
女骨の骨を、他の骨と混ざらないように壁際に持っていく。
記憶が断片的に頭蓋をよぎる。
そうだ。あの時も間に合わなかった。
変わり果てたクレアが玄関で俺を出迎える。
きっと俺のことを旦那と思っているのだろう。
「アイツは来ないよ」
俺がそう言った時、クレアはどんな表情をしたのか。
それは思い出せない。
俺は彼女と、彼女の家族に向けて、銃の引鉄を引いた。
(また、守れなかったな)
地面を掘り起こし、そこに女骨の骨を埋める。
その時、ガチャンッ、と金属音が鳴り響き、床に新たな骨が落ちてきた。
(今度は鎧か)
新しく落ちてきた骨は、全身に銀色の甲冑を身に纏っている。
鎧に守られているからか。
上から落ちてきたため、ダメージも無いように思えた。
ガチャン、ガチャン、とうるさい足音をたてながら俺に近づいてくる。
(コイツを女骨に捧げるか)
俺のすぐ後ろに鎧骨が立つ。
すっ、と鎧骨が腰のほうに手を伸ばすと、そこには鞘があり、大きな剣が装備されていた。
それをゆっくりと抜き、構えている。
刃の両側に角度がつけてあり、刀身の両方に刃がある諸刃の剣だ。
大きさは1メートル近くあり、大剣の部類にはいる。
鎧骨は、両手で剣を上げ、俺に向かって振り下ろす。
(……おそい)
横っ飛びでその攻撃を交わし、鎧骨の背後に回る。
鎧骨の剣は地面に突き刺さり、すぐには抜けなかった。
そのスキに背骨ムチで、攻撃する。
全身を鎧で覆われているので、その繋ぎ目を狙う。
頭の兜と身体の鎧の隙間、首筋に上手く背骨ムチの先端、牛角骨が入り込む。
ガッ、という音は、骨を砕いた音ではなかった。
(鎧の下にも、何か着ているのか)
鎖かたびらのようなものが、鎧の隙間から見えていた。
背骨ムチが跳ね返され、鎧骨がこちらを振り向く。
兜の中で、カッカッ、と歯を鳴らす音がした。
そんなものはきかないよ、とでも言っているのだろう。
鎧骨は、余裕たっぷりに地面から抜いた剣を再び構える。
(そんなもので、無敵だとでも思っているのか?)
俺は、いや俺たちは、もっと強い敵と毎日戦ってきた。
(馬鹿にするなよ、なあ、女骨)
同じように、俺も歯をカッカッ、と鳴らす。
鎧骨が今度は横に大きく剣を振るってきた。
それを左手に装着したゴリラアバラ盾で受け止めると、ゴンっ、と大きな音がして、剣が跳ね返る。
鎧骨は、構わずに何度も何度も、剣を叩きつけ、俺もそれを盾で受け続けた。
ゴリラ骨がドラミングしているような音が、穴の中に鳴り響く。
それは、まるで女骨に捧げる鎮魂歌のようだった。
【骨骨メモ】
日付 6日目
骨強化 3回
追加骨 仙骨1 牛角骨1 腰椎5 胸椎12 猿尾骨 1
総合骨数 236骨
武器 骨ヌンチャク 背骨ムチ ゴリラアバラ盾
保存砂骨 500グラム
現在の骨強度 ひのきの棒レベル
負傷箇所
全回復
仲骨 女骨
死亡




