第三十骨 死骨
六日目の夜を迎えようとしていた。
地面に彫り刻んだ正の字が、二つ目に突入する。
この五日間、一日も休まる日はなかった。
一日目、何もわからないまま、同じ骨と一対一で戦った。
二日目、牛骨と死闘を繰り広げる。
三日目、複数の骨と同時に戦う。
四日目、すでに強化された武骨が現れた。
五日目、猿骨の大群とゴリラ骨を相手にする。
どこで、終わっていてもおかしくない、そんな毎日だった。
いつまで生き残れるのか。
いや、生き残れても、その先に何が待っているのか。
戦うだけで、この状況は、まるでわかっていない。
……いつか、わかる日がくるのか?
天井から射し込む月の光を見つめながら考えていた。
また、今夜も骨が落とされてくるのだろう。そう思っていると……
ぎっ、と軋むような音が聞こえてきた。
聞いたことのある音だ。
壁の切り目がゆっくりと動いていた。
(……まさかっ!!)
内側に向かって壁が開き、初日と同じようにあの骨が現れる。
究極の骨。
骸の王が。
一瞬、思考が停止したように、また骸の王に見惚れ、呆然と眺めてしまう。
だから、止めにいくのが、遅れてしまった。
いや、その行動はあまりにも予想外すぎて、どのみち止められなかったかもしれない。
現れた骸の王に、女骨がいきなり襲いかかったのだ。
猿骨戦で渡したままだった骨ヌンチャクを、骸の王の頭蓋骨に向けて、振り下ろす。
骸の王は、避けることも受け止めることもしなかった。
ヌンチャクが当たる寸前に、軽く、ジャブのような動作で、女骨の頭蓋骨を叩く。
パンッ、と弾けるような音がして、女骨の頭部が弾け飛んだ。
(……あ)
女骨は、振り上げたままの骨ヌンチャクを下ろすことなく、その場に崩れて落ちる。
(ちょっと、まってくれ)
フラフラと女骨のほうに向かい、なくなった頭部に、昨日保存していた砂骨を塗りたくる。
しかし、まったく反応がなく、女骨の再生は行われない。
(嘘だろ、こんなに、簡単に……)
大切なものは、あっさりなくなっていく。
それを知っていたはずなのに、また守れなかった。
あの時と同じように守れなかったっ!
(う、うあ、ああ、クレアっ、クレアっ!)
頭が真っ白になっていく。
しかし、それでも意識は失われない。
俺の身体が記憶が、骸の王と戦うことを全力で拒否している。
骸の王は、しばらく俺を見下ろした後、また扉から出ていく。
まるで、虫ケラを見ているような、そんな視線を感じていた。
(ああああああああぁあぁあぁぁあぁあぁっ!!)
俺は、去っていく骸の王を見れずに、ただ女骨の亡骸を抱いて、泣き叫んだ。
【骨骨メモ】
日付 6日目
骨強化 3回
追加骨 仙骨1 牛角骨1 腰椎5 胸椎12 猿尾骨 1
総合骨数 236骨
武器 背骨ムチ ゴリラアバラ盾 骨ヌンチャク
保存砂骨 500グラム
現在の骨強度 ひのきの棒レベル
負傷箇所
全回復
仲骨 女骨
死亡
 




