第二十九骨 盾骨
まず1番に目についたのは、ゴリラ骨の追加骨だ。
それはこれまでの追加骨で一番大きなサイズだった。
(肋骨が全部揃っている)
それは猿骨に奪われ、ドラミングができなくなったゴリラ骨の頑強な肋骨だった。
(隙間なく、肋骨が密集している。これは……)
手に取って確かめて見る。
ズシリ、と重たいゴリラの肋骨は、下にいくほど広がって逆三角形になっていた。
それをあえて、反対にする。
(……盾だ)
それを前に構えると、身体の半分以上が隠れる、巨大な盾のように見えた。
強度を確かめるために、軽く拳で叩いてみる。
どん、とゴリラ骨がドラミングをした時のような音が響き渡った。
(これは、使えるな)
いままでにない、防御型の追加骨に、かなりの好感触を感じる。
ゴリラアバラ盾。
自然にその名前が頭に浮かぶ。
これがあれば、今回の戦いのように集団に囲まれても、広範囲で攻撃を防げそうだ。
ゴリラアバラ盾を右手骨で持ち、左手の前腕部にある尺骨と橈骨の間に合わせる。
追加骨についていた関節球が、ピタリ、と前腕部と重なり合って一体化した。
これで、両手の自由を得たまま、ゴリラアバラ盾を使うことができる。
欠点は少々重たくて、動きが鈍ることぐらいだ。
その点は骨を強化していけば、なんとかなりそうだった。
(さて、次は)
追加骨はまだあった。
猿骨が残していった追加骨だ。
これはゴリラ骨と違い、二つある。
どうやら、俺と女骨の二人分が出たらしい。
(これは? どこの骨だ?)
手に取って見てみるが、人間にはない骨だった。
いや、似たような骨はある。
(そうか、これは尾骨か)
人間の尾骨は3から6個の尾椎が結合して、他の動物に比べて著しく退化した痕跡器官となっている。
だから、人間には、尻尾として対外には現れず、その機能を果たす事はない。
だが、猿のように尻尾を使って木にぶら下がったりする動物の尾骨は、背骨のように沢山の骨が重なり合い、長くなっている。
(これは、尻尾として使えるのか?)
退化した自分の尾骨に長い猿骨の尾骨を合わせると、嘘のように簡単に繋がった。
(コントロール出来るのか?)
試しに動かして見ると、思い通りとはいかないまでも、右に左に大きく動く。
細かい動きは、まだできないが、慣れれば、武器などを尾骨で拾ったり、できるようになるかもしれない。
女骨も俺と同じように尾骨を装着して、動かしていた。
勢い余って、自分で自分の尾骶骨を叩いている。
カカッ、と歯を慣らし思わず笑うと、睨まれてしまった。
怖いので、視線を逸らして口笛を吹く。
骨の隙間からひゅー、ひゅー、という乾いた音が聞こえてきた。
(大苦戦したが、それなりに報酬は大きかったな)
敵が強ければ強いほど、それを倒せばそれだけ強くなれる。
それを嫌というほど実感した五日目の夜だった。
【骨骨メモ】
日付 5日目
骨強化 3回
追加骨 仙骨1 牛角骨1 腰椎5 胸椎12 猿尾骨 1
総合骨数 236骨
武器 背骨ムチ ゴリラアバラ盾
保存砂骨 500グラム
現在の骨強度 ひのきの棒レベル
負傷箇所
全回復
仲骨 女骨
日付 3日目
骨強化 2回
追加骨 仙骨1 猿尾骨 1
総合骨数 208骨
武器 骨ヌンチャク
現在の骨強度 脆弱と貧弱の間
負傷箇所
全回復




