第二十六骨 骨往生
その一撃は弱っていたゴリラ骨の心臓部に突き刺さった。
狙っていたわけではない。
ただガムシャラに振り回した背骨ムチが偶然そこに入ったのだ。
重要な部位を守るはずの肋骨は、ほとんど猿骨によって奪われていた。
たまたま、最後の一撃を俺が放ったことになる。
ゴンッ、最後にゴリラ骨は、自らの肩を叩いた。
最後のドラミング。
誇り高きゴリラ骨は、その活動を終えても、倒れはしなかった。
その大きな骨の身体は、穴の中心で立ったまま息絶える。
カッ、カカッ、と残った猿骨が俺を囲む。
その数は僅か十匹に減っていた。
(ついに、ここまできた)
満身創痍ながら、最終局面まで生き残る。
もう、身体中の骨は、少し動くだけで、軋み、砕けそうだった。
(ゴリラ骨が来なかったら最初の攻撃でやられていた)
敵だったゴリラ骨に感謝する。
あれだけの数の猿骨共を倒してくれなければ、俺に勝ち目など一ミリもなかった。
(あとは全力で、戦うだけだ)
もう小細工など必要ない。
向かってくる猿骨共を叩き潰す。
俺の骨が砕けるのが先か、猿骨共が全滅するのが先か。
(いくぞっ)
最後の戦いは、俺のほうから猿骨共に突っ込んで始まった。
不意をつかれた猿骨の頭蓋骨を背骨ムチで砕く。
(あと九匹っ)
残った猿骨共が一斉に襲いかかってくる。
再び背骨ムチで、空中の猿骨の背骨を砕く。
(あと八匹っ)
半分が下半身に半分が上半身にしがみついてくる。
骨を抜き取られ、噛み砕かれ、バランスが崩れていく。
それでも倒れながら、猿骨共に攻撃する。
(あと、七、六、五匹っ! あと少しっ、あと…… あれ?)
それは油断ではなかった。
いつのまにか、視界から一匹消えていた。
ガリッ、と後頭部から音がする。
背後から忍びよった一匹が、俺の頭蓋骨に噛み付いていた。
(まずい、そこはっ)
ゴリラ骨によって、強烈な一撃を受けたところだっ!
それは初めて受ける致命的なダメージだった。
心臓部や頭部には、きっと見えない魂の塊があるのだろう。
それが骨から抜けていく。
(あと、あと少しだったんだっ)
カカッと頭蓋骨にしがみついたまま笑う猿骨を、最後の力を振り絞り、掴んで頭から地面に叩き落とした。
(……あと四匹)
残りは女骨がなんとかしてくれるだろうか。
最後に女骨を見ようとしたが、意識が暗闇に包まれ何も見えない。
すでに崩れかけていた全身の骨が、さらに崩れていく。
(……終わる、のか? 俺は、何もわからないまま、こんなところでっ)
グシャ、という音がして、地面に崩れ落ちる。
俺の戦いが終わりを告げた。
【骨骨メモ】
日付 5日目
骨強化 2回
追加骨 仙骨1 牛角骨1 腰椎5 胸椎12
総合骨数 235骨
武器 背骨ムチ
現在の骨強度 脆弱と貧弱の間
負傷箇所
右脚大腿骨 亀裂骨折
頭蓋骨 粉砕骨折
他多数亀裂骨折
仲骨 女骨
日付 3日目
骨強化 1回
追加骨 仙骨1
総合骨数 207骨
武器 骨ヌンチャク
現在の骨強度 貧弱貧弱
負傷箇所
背骨胸椎 亀裂骨折
左手上腕骨 開放骨折
右脚大腿骨 開放骨折
他多数亀裂骨折




