第二十一骨 大量骨
絶望が穴に降り注がれる。
一瞬、呆然となっていたことを後悔した。
落とされてきた大量の骨。
それが何の骨かは、わからない。
だがそれらがすべて動き出せば、どうしようもなくなる。
それだけは、わかっていた。
(女骨っ!)
俺と同じように呆然としていた女骨に、骨ヌンチャクを投げつける。
俺は、仙骨から追加骨の背骨を外して、先端に牛角骨を取り付けた。
カッ、カッ、と歯を鳴らしながら、落ちてきたばかりの骨の頭部に背骨ムチを振るう。
パンッ、という渇いた音と共に、骨の頭部は簡単に砕け散った。
(少しでも、少しでも数を減らすっ!)
その行動を理解してくれたのか、女骨も骨ヌンチャクで、落ちてきた骨を叩き潰していく。
全体が小さい。
大きさは50センチくらいか?
だが、子供の骨ではない。
人間の骨に似ているが僅かに違う。
頭蓋骨のてっぺんが突起しており、肋骨の配置が異なっている。
人間の肋骨は上半身から下半身にいくにつれて、弧を描くように並んでいるが、この骨の肋骨は上半身から下半身にいくごとに傘が開いたようになっていた。
そして、最大の違いは、尾骨だ。
仙骨の先から、人間が進化の過程で無くしてしまった長い尻尾が伸びている。
(猿かっ! これは猿骨なのかっ!?)
嫌な予感がした。
記憶はないが、猿という言葉から、異様なまでの嫌悪を感じる。
生前、猿によって被害を受けたことがあったのだろうか。
カカカッ、と砕いた骨の中で歯が鳴る音が聞こえてきた。
何匹か仕留め損ねた猿骨が動き始めている。
慌てて、背骨ムチを叩きつけるが、猿骨はジャンプしてそれをかわした。
(早いっ! そして、高いっ!)
膝下ぐらいの高さしかない猿骨が、俺の頭上を超える高さまで飛び上がる。
そして、そのまま、俺の頭蓋骨にしがみつき、噛み付いた。
ガッ、と横から女骨が骨ヌンチャクで、その猿骨の頭蓋骨を叩き割る。
(あ、ありがとうっ!)
カッ、カッと歯を鳴らしてお礼を言うが、女骨のほうを振り向く余裕はない。
もう少しで急所である頭蓋骨にダメージを負うところだった。
今は一匹でも多く、仕留めることに集中する。
何匹も動き出したら、絶対に勝ち目はない。
ガムシャラに、ただひたすらに猿骨の頭蓋を砕いていく。
穴はもう、猿骨の残骸で埋まり、足の踏み場もなくなってきた。
なのに、だ。
上から骨がぶつかる音がして、天井を見る。
(馬鹿なっ!)
今までに落とされてきた猿骨と同じくらいの大量骨が、上から落とされていた。
(ふざけるなっ! なんだっ、これはっ!!)
埋もれる骨の中から、猿骨共が動き出す。
ついに、絶望がこの穴を埋め尽くした。
【骨骨メモ】
日付 5日目
骨強化 2回
追加骨 仙骨1 牛角骨1 腰椎5 胸椎12
総合骨数 235骨
武器 背骨ムチ
現在の骨強度 脆弱と貧弱の間
負傷箇所 右脚大腿骨 亀裂骨折
仲骨 女骨
日付 3日目
骨強化 1回
追加骨 仙骨1
総合骨数 207骨
武器 骨ヌンチャク
現在の骨強度 貧弱貧弱
負傷箇所 背骨胸椎 亀裂骨折




