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第二骨 骨の中で

 

 その時は意外と早くやって来た。


 俺の周りに散らばる骨はどれも執拗なまでに砕けている。

 穴から落とされただけでは、そのようにはならない。

 ハンマーのような重い鈍器で砕かれたような跡がある。

 ここで何が起こったのか。

 ここにある骨も、俺と同じように骨になってから動いていたのか。

 骨の残骸を細かく調べる。

 見た目はただの骨だ。動いていたかどうかはわからない。

 だが、一つ気になることがある。

 この骨は自分の骨よりも明らかに……


(……!?)


 地面にある骨を手に取った時に、そこに文字が書かれているのを発見した。

 地面は正方形の形をした石のタイルが均等に敷き詰められている。

 そこに書かれたものは、ペンを使って書いたものではない。

 骨を使って地面を削り取り、書いたのだろう。


『たすけて、うばわれる』


 背骨がゾクッとなり、思わず辺りを見渡す。


 自分がなぜここにいるのか。

 どうして、骨だけなのに意識があり、動けるのか。

 その疑問を解決するより、まずはここから脱出しなければならなかった。


 砕けた骨を踏みながら、辺りを観察するように歩く。

 10メートル四方程の広さで、周りはすべて、黒ずんだ岩に囲まれている。

 骨のように、岩の種類がわからないことから、俺は地質学には詳しくないらしい。

 井戸状に開口している縦穴で、天井までは50メートル近くありそうだ。

 今は夜らしく、上からほのかな月明かりが差し込んでいる。

 登れないか、岩に手をかけたが、ツルツルとよく滑り掴みようがない。

 やはり、上から落ちて、もしくは落とされてここに来たのだろうか。

 もう一度、岩壁を注意して観察していく。


(これは……)


 声を出すことは出来なかった。

 壁の一部の岩にほんの少しだけ、切り目が入っていた。

 それは、自然にできたものとは到底思えず、真っ直ぐ正確に、縦長の長方形の形になっている。


(扉、なのか)


 その部分に力を込めて押してみる。

 実際、筋肉がないので、力が入っている実感はないのだが、とにかく力いっぱい押し込んだ。


 壁はピクリとも動かなかった。


 俺の力が足りないのか、鍵がかかっているのか、そもそも切り目だけで、扉ですらないのか。

 どちらにせよ、今の自分にはどうすることもできない。


 現段階では、ほぼ脱出が不可能ということが判明する。

 何者かがここに来て、俺を破壊するまで怯えて待つしかないのだろうか。

 いや、出来るだけのことはやっておくべきだ。

 無駄かもしれないが、周りの骨をかき集め、いくつかの山を作っていく。

 そのうちの一つに身を隠せば、もしかしたら、俺を破壊しに来た者が見逃すかもしれない。

 骨をかき集め作った三つの山。

 その山の一つの中に入り、一体化する。

 こんなカモフラージュでは、時間稼ぎにもならないか。


 そんなことを考えていると……


 ぎっ、と軋むような音が切り目の入った壁から聞こえてくる。

 どうやら、やはりあの切り目は扉だったらしい。

 ゆっくりとその壁は、内側に向かって開いていく。


(ああ、これは……)


 その扉の向こうから、何かがやってくる。

 俺は、そのモノを見たとき、あまりの感動に隠れることも忘れ、呆然と立ち尽くし、身惚れてしまう。


(……素晴らしい)


 あらゆる骨を超える、完成された骨がそこにいた。



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