第十二骨 月見骨
二つの骨が活動を停止してから、ようやく骨の砂化が始まった。
どうやら複数の敵がいる場合は、すべてを倒すまで骨は崩れないようだ。
ようやく、頭蓋骨から解放された右手骨の牛角骨を見る。
今度突き刺す時には、力加減も重要だな。
次の戦いの前に、落ちている骨で練習したほうがいいかもしれない。
砂化した骨が、また螺旋状に纏わり付き、折れた左鎖骨を直してくれる。
ダメージはそれだけだったので、今回は骨が強化されていく。
隣を見ると、女骨も同じように、砂が傷を癒し、強化されていた。
おそらく戦って倒した骨が、自分の糧となるのだろう。
俺が二体とも倒していたら、倍の強化が得られたことになるが、女骨が手伝ってくれなかったら、負けていたかもしれない。
礼のつもりで頭を下げると、女骨も同じように頭を下げた。
もう、頭に痛みが走ることはない。
記憶はこれ以上戻らないようだ。
女骨にも、なにか覚えていないか、と床に書いて問いかけたが、首を横に振る。
どうやら、自分と同じく記憶喪失らしい。
結局、クレアという名前以外は何もわからなかった。
その名前ですら本当にあっているのか、確かめようもない。
女骨は俺のことを知っていたから、敵にならなかったんじゃないか?
そんなふうに思ったが、表情のない女骨の顔からは、何も汲み取ることはできなかった。
骨の強化が終わり、いつものように崩れずに残った骨を確認する。
小さなブロック状の骨が5つ転がっている。
(腰椎だ)
24個ある背骨の下部にある腰椎。
これまで一つずつしか骨は残らなかったが、小さな骨はまとめて落とすのか?
それともあまりダメージがなかったから、たくさん得ることが出来たのか。
まだ情報量が少なく、どちらかはわからない。
隣を見ると、女骨の前には仙骨が転がっていた。
俺も最初は仙骨だった。
もしかして、落とす骨はランダムではなく順番が決まっているのだろうか。
まだまだ、これから検証していかなければならない。
もっとも、長く生き残れたらの話だが……
すでに取り付けていた仙骨の上に5つの腰椎を重ねていく。
腰椎は下になるほど大きくなるので、悩むことなく、組み立てられる。
隣の女骨が、仙骨をもったまま、どうしたらいいかわからず、首を傾げていた。
自分に追加した仙骨を指刺して、ここにつければいい、というジェスチャーをすると、女骨も同じように仙骨を仙骨に当てる。
上手く結合したようで、女骨はカッ、カッと歯を鳴らす。
どうやら、ありがとう、と言っているようだ。
いまのところ、女骨は敵ではないと思っていいだろう。
今日のように複数の骨が落ちてきた場合は、強い味方になる。
だが、一人の敵を二人で倒したらどうなるのだろうか。
骨強化や回復、そして追加骨はすべて半分になるのか、トドメを刺したほうがすべて持っていくのか。
それも検証しなければ、わからない。
まだまだ、この穴は謎だらけだ。
天井を見上げると、今夜は綺麗な満月だった。
次の満月はもう見ることはできないかもしれない。
そう思って、見ていると、女骨も横に立って同じように満月を見る。
朝が来るまで俺達はずっとそのまま、満月を眺めていた。
【骨骨メモ】
日付 3日目
骨強化 2回
追加骨 仙骨1 牛角骨1 腰椎5
総合骨数 213骨
武器 折れた大腿骨
現在の骨強度 脆弱と貧弱の間
負傷箇所 全回復
仲間骨 女骨
日付 1日目
骨強化 1回
追加骨 仙骨1
総合骨数 207骨
現在の骨強度 貧弱貧弱
負傷箇所 全回復




