第十一骨 共闘骨
最初の一撃を受け止めたのは奇跡に近かった。
反射的に両腕骨を上げたところに、二体の骨が腕骨を振り下ろす。
それが上手く右手骨の牛角骨と左手に持った大腿骨に当たる。
バキン、という音がして、ヒビが入ったのは、二体の骨共の腕のほうだった。
(今だっ、今しかないっ)
女骨の正体は気になるが、まずはこの骨共を片付ける。
最初の予定通り、右側に立つ骨の頭蓋骨にめがけて、まっすぐ牛角骨を突き刺した。
ザクッという小気味のいい音と共に、鼻骨の真上に牛角骨が刺さる。
カクン、と力をなくしたように右側の骨は、脱力して、その場に崩れ落ちた。
(倒したっ、次だっ)
油断せずに、すぐさま左の骨に向き直る。
さっきと同じように再び腕を振り上げ、俺を攻撃しようとしていた。
(させるかっ)
右の骨から牛角骨を抜いて、体勢を整えようとする。
(……えっ!?)
ここで計算外の事態が起こってしまった。
あまりにも力強く突き刺してしまった為、右の骨の頭蓋骨から、牛角骨が抜けなくなってしまったのだ。
(まずいっ、まだ砂にならないのかっ!)
倒した後、骨はすぐに砂にならない。
このままでは、一体分の骨を持ったまま戦うことになる。
いくらなんでも、その状態で勝てるとは思えない。
振り下ろされた骨の腕が、左鎖骨を強打する。
比較的脆い骨である鎖骨は、簡単にバキンと折れて、真っ二つになってしまう。
(自ら、右腕の骨を折るしかないのか)
そんな考えが頭によぎる。
だが、その行動を起こす前に、これまで観戦していた女骨が、こちらに向かって突進してきた。
(無理だ。この状態で二体は相手にできないっ)
絶対絶命の状態で、また頭蓋骨に痛みが走る。
(……クレア)
唐突に女性の名前が頭に浮かび、無意識のうちに呟いていた。
もちろん、声には出ず、カッカッ、と歯を鳴らすだけだ。
だが、それに頷くように、女骨もカッ、カッ、と歯を鳴らす。
そして、俺に向かって、腕を振り上げていた骨の背骨を、女骨の足骨が蹴り上げた。
骨が前のめりに倒れて、俺の横にうつ伏せになる。
その上に女骨が馬乗りになって、背骨を拳で殴りだした。
女骨には、あまり骨の知識がないのか、背骨よりも殴る手骨のほうが脆く、ヒビが入っていく。
(これ、使う?)
ジェスチャーで大腿骨を渡す素振りをすると、女骨は大きく頷いた。
両手で大腿骨を持ち上げて、背骨に向けて、思い切り振り下ろす。
背骨は1本の骨ではなくて、椎骨と呼ばれるブロック状の骨が24個積み重なってできている。
頭のほうから順番に、7個の頸椎、12個の胸椎、5個の腰椎で連結され、それらを仙骨が支えている。
女骨は、馬乗りのまま、その背骨に何度も何度も大腿骨を叩きつけ、粉々に破壊していく。
いつのまにか、骨は完全に動かなくなっていた。
【骨骨メモ】
日付 3日目
骨強化 1回
追加骨 仙骨1 牛角骨1
総合骨数 208骨
武器 折れた大腿骨
現在の骨強度 貧弱貧弱
負傷箇所 左鎖骨 斜骨折
仲間? 女骨




