第九骨 牛角骨
牛骨を倒して得た骨は、一本の角だった。
骸の王が頭蓋骨に装着していたのは、一対二本の角だったので、同じようになるには、もう一体、牛骨を倒さないといけない。
(……出来ればもう二度と戦いたくないな)
勝てたのは運が良かっただけだ。
もう一度やって勝てるとは思えない。
もっと強くなるまでは、もうこないでほしかった。
まずは骸の王ではなく、一日一日を生き延びることを考えていこう。
手に入れた牛角は、温存せずに装着することにした。
頭蓋骨のコメカミに持っていき、繋げようとする。
(あれ?)
仙骨がはまった時のようにはいかなかった。
牛角は、繋がる様子はなく、ポロリとそのまま落下する。
(頭蓋骨につけるのではないのか?)
人間の骨は、考えなくても自然に繋げる場所がわかったが、牛の骨はまったくわからない。
仕方がないので、身体中の骨の部位に手当たり次第に当てていく。
カチリとハマったのは、右手の甲にある手根骨だった。
手を握ると外側になる、手首から指のつけ根までの面は、手根骨という。
手根骨は舟状骨、月状骨、三角骨、豆状骨、大菱形骨、小菱形骨、有鉤骨、有頭骨から構成される8つの小さい骨の集合体だ。
その中で最も大きい有頭骨が中央に位置していて手首の運動の中心となる。
その有頭骨と牛骨の角が見事に繋り、最初からそこにあるかのように綺麗に癒着した。
(突き刺して使えばいいのか。なかなかカッコいいじゃないか)
用途としては、頭蓋骨についているより使いやすく思える。
右手骨を動かしてみると、シャッと、角骨が空気を切り裂く音がした。
少しずつだが、強くなっている。だが、まだまだだ。
もっともっと強くならなければ生き残れない。
いくつかの仮説を考えてみた。
ここで倒した骨は、砂骨となり、回復や骨強化として活用できる。
ダメージを負いすぎると回復しかできないということは、ノーダメージで倒せば、それだけ多く骨が強化されるということだろう。
では、床に散らばっている壊れた骨は、なぜ、砂にならなかったのか。
おそらく、骸の王には、回復や骨強化の必要がなかったのだ。
その場合は、砂にならずそのまま残り、そこから追加する骨を選び、奪うことができるのだろう。
ただ倒すだけじゃない。
なるべく、ノーダメージで勝つことで、さらに強くなることが可能なのだ。
牛骨の頭蓋に刺さっていた大腿骨を地面から拾う。
武器としてこれはまだ持っておこう。
天井を見上げると昼間なのか、日の光が強く差し込んでいた。
夜までに何か準備をしたほうがいいのか。
散らばっている骨で簡単な罠を作ることはできる。
骨を縦に置き上から落ちてくる骨を串刺したり、落とし穴を作って動きを封じれば、戦いは有利に進むだろう。
だが、それをする気にはなれなかった。
そんなことして勝っても、強くはなれない。
なぜだかわからないが、そんな気がした。
ここはそういう場所じゃない。
純粋に戦い、生き残り、強くなる場所だ。
記憶がないはずなのに、そう確信する。
身体中の骨がそれが正解だというように、ぶるっ、と震えた。
【骨骨メモ】
日付 2日目
骨強化 1回
追加骨 仙骨1 牛角骨1
総合骨数 208骨
武器 折れた大腿骨
現在の骨強度 貧弱貧弱
負傷箇所 全回復




