タイミングをズラせばいい
修学旅行で買った、101.5cmの赤樫木刀を持って再び道路を覗く。
放課後遊ぶような友達もいなかった僕は、ゲーム作成のために3Dモデリングソフトでキャラを作っていた。
モーション付きのキャラクターデータを作る際、キャラクターの肉体と骨に分けて作られる。物体として存在するのは肉体、オブジェクトと呼ばれる。
そして、骨をボーンと呼び、それぞれのボーンがオブジェクトのどこを動かすかを決めるのだ。
僕は人体の構造や武術なんて習っていなかったので、本やインターネットの動画などを駆使して、モーションデータを作った。
しかし、思っていた動きに中々ならない。
そこで僕は、自分の体で再現してみれば原因が分かるのではないかと思ったのだ。
そこからの日々は大変だった。
四六時中、歩いている時でさえ骨の動きや筋肉の収縮について意識をし、武術の練習にいたってもスローモーションで全ての骨の動きを解析、記憶してから自分の体で再現をしてみるなど。
まあ、学校の皆から変な目で見られたけどね...いや、通行人もか。
そんなことを繰り返しているうちに、次第に楽しくなっての木刀で剣術の練習をダイエット代わりにするようになった。
剣術なのは、まともな武器が木刀しかなかったからである。
剣術は後の先、相手の攻撃に合わせて動くのを主体とするため、僕の戦闘スタイルもそれに近くなった。
そして、次第に僕は1対1だけでは満足できなくなり、1体多の戦いも研究するようになり、連携の崩し方まで体で覚えるまで練習した。もちろん男友達と。
そんなこともあり、自分にとっては5人までの敵なら連携が相当上手くない限り、1対1を繰り返すのと同じだ。
問題はゴブリンの単体での強さである。
群れているので単体ではそこまで強くないはずだが、相手はモンスターだ。
モンスターとしての基準で弱いため群れているだけで、人間よりも能力が高いかもしれない。
もしそうなら勝てないだろう。
だから、観察する。
非戦闘時の動きから戦闘時の動きを想像し、もう一度観察してイメージを修整する。僕の想像通りなら、そろそろなはずだ。
僕は観察を続ける。
そして暫くして、急に相手の力が感覚で大まかに分かるようになった。
「ステータス」
神童達也
種族:人間Lv1
Age:17
HP:100/100
MP:10/10
ST:100/100
STR:7
VIT:8
DEX:9
INT:1
MEN:1
SPD:5
スキル
精神苦痛耐性Lv1、隠密Lv1、強弱看破Lv1
予想通りに、大体の強さが理解できるようになった。スキル獲得が簡単で助かったな。
そして、どうやらゴブリンは僕と同じくらいの強さらしい。あのサイズで僕と強さが同じなのは中々脅威であるが、そのぐらいなら問題ない。
僕は出口へ向かって歩いていく。
そして、エントランスの扉を通ろうとしたところで気づいた。
周りを警戒していたゴブリンが、まだ気づいていないのだ。
(視力が弱いと言っても限度がある、もしかして俺って影が薄いのかな?
いや、そんなことはないはずだ。クラスメイトは俺の事に気づかなかったことは少ししかないし...)
試しに、僕は手を叩いて大きな音を鳴らしてみたが、ゴブリン達は相変わらずゴミ袋を漁っている。
(それに、今思えばモンスターが他人の家に入っていてもおかしくないはずだ。それなのに騒ぎになっていないという事は)
モンスターは住居には入れない、もしくは扉がある建物には入ってこれないということになる。
これは大きなアドバンテージになる。
建物がセーフエリアになる。
つまり、比較的安全にレベル上げが出来る。
エントランスを出る。
すると、ゴブリン達が一斉に気づいてこちらを見た。
気づかれたと同時に僕はゴブリンに向かって走り出していた。
戦いの基本は奇襲である。5対1でも戦えるが、より確実な戦いにして損はない。
先手で大ダメージを与えられるチャンスなのだ。
僕は近くにいたゴブリンに向かって脇構えから木刀を振り上げる。
――ドガッ!
「グギャッ!」
ゴブリンは叫び声を上げながら打ち上げられて行き、骨と肉の感触が手に伝わる。
けど、嫌悪感はなかった。
残りの4匹が棍棒を持って飛びかかってくる。
「ギィエエァッ!」
(連携が取れていないな)
僕は右端にいるゴブリンの方へ距離を詰める。
すると、敵の攻撃が届くタイミングが若干ズレる。
そして先に到達することになる右端のゴブリンが間合いに入ったところで木刀を袈裟に振り下ろす。
――ブンッ!
「ギィ!?」
そこで木刀が急に手に馴染むようになった。スキルを獲得したのだろう。
そして次に届くゴブリンの棍棒を木刀で防ぎ、受け流す。
(この程度なら問題ないな。近くにいたのがゴブリンでよかった。)
またゴブリンの攻撃が来るので、届く前に薙ぎ払う。
ゴブリンは木刀の一撃だけでは死なないようで、起き上がってきたゴブリン達が次々と襲いかかってくる。
だが、先程と同じようにタイミングをズラして叩き、受け流し、払って対応していく。
そして、ボロボロで動きが遅くなってきたところで滅多打ちにすると動かなくなった。




