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トコヨのクニ  作者: 立花 葵
6 大人の階段
23/50

6-3

 睦美の手が緩み、幸島は「ぷはッ!」っと顔を離した。

「な、な、な、何を――」

 っと、慌てふためく幸島の口を、再び睦美の唇が塞いだ。

「んんッ!! んんんッ――!!」


 やがて……。

 もがき疲れた幸島がぐったりとしてきた頃――

 

 ようやく拘束を解き、睦美は身を起こした。

「フフフ、ごちそうさま。やはり初物は美味いな」

 ぐったりと……汚された乙女のように横たわる幸島を見下ろし、余韻を味わうように舌舐めずりを繰り返した。

「な……な……何の」

 ふと幸島は言葉を止め、ポロリと口内の異物を押し出した。

「種……?」


 ふと、睦美は静馴に目を向けた。

 顔を赤く染めつつも、思わず二人の様子を凝視していた静馴はハッと目を逸らした。

「レンゲ……いや、蓮花(はちすか)静馴(しずな)

「は、はい……?」

コイツ(幸島)の童貞は私がもらう!! これ(幸島)は私がもらう。欲しいのなら、どうすれば良いか考えろ」

「……え? あの、その……私は、その……別に……」


 なにやらモゴモゴと言い訳をする静馴から、幸島に目を戻した。

「幸島大」

「はい……?」

「静馴の処女は私が貰う!! 蓮花静馴は私の女にする」

「……は?」

「ちなみに、静馴のファーストキスを奪ったのも私だ」


 ――っと、睦美は指を突き出し、何か言おうとする静馴の口を塞いだ。

「女同士だからノーカンなんて事にはならないぞ? 理由は知っているだろう?」

 そう言って、幸島に視線を移した。

(両刀ミネシマ……)

「そう、私はどちらもイケるくちだ。男も女も、どちらも愛せる。どちらも性の対象として愛せる」


 睦美はヒラリとベッドを降り、戸口へと歩いた。

「処女と童貞……。どちらが美味しいのかな?」

 フフフっと一瞬二人を振り返り、押し開けられた(・・・・・・・)引き戸から部屋を出た。


「……」

 その背をぼうっと見送った二人は、何処かバツが悪そうに互いの視線を逸らした。

「お、お見舞い……。マスターさんから……置いて、おくね……」

「うん……あ、はい……」

「やりすぎた。でも面白かった……って、マスターさんが」

「は、はい……」

「それじゃ」

 っと、静馴は赤い顔を隠すようにそそくさと部屋を出た。



 同じ頃……。

 竹林を歩くナナさんの姿があった。

「この辺だと思ったんだけどー」

 手頃な岩に上り、ちょいちょいと顔を洗った。

「お、ナナ! ここだ、こっちだ!」

 足下を見ると、岩影にドアノブが転がっていた。

「あー、玄関みーつけた」


 ヒラリと岩を降り、ナナさんはちょいちょいとドアノブをつついた。

「結構飛んだねー」

「ったく、なかなか良い肩してやがる……。まぁ、ともかく助かったぜ」

 っと、安堵のため息を漏らすドアノブとは対照的に、ナナさんは瞳に鋭い光を湛た。

「ねぇ玄関ー」

「ん? なんだ?」


「助けても良いんだけどー、条件があるのー」

「は? なんだそりゃ? お前ちょっと性格悪す……」

 ドアノブを覆うナナさんの影が、ムクムクと大きく膨らんで行く――

「え……?」

 日差しを遮る巨大な影の中に、ギラリと鋭い瞳が光った。


「わたしはねー、幸島に幸せになってほしいのー」

「……お、おう」

「それでねー――」

 言葉を発する度に、ちょいちょいと顔を洗う度に……巨大な爪と牙がギラリと顔を覗かせた。

「玄関聞いてるのー?」

「も、もちろん……」

「分かってくれた?」


「お、おう……」

 と言ったものの……

 あの牙で……あの巨大な口で、手で……自分を潰さずに拾えるのか? 運べるのか……?

 ナナさんの言葉は右から左へ耳をすり抜けた。

「じゃぁ、約束できるー?」


 中身は全く覚えていないし理解もしていないが……流れ的にYESと答えなければこのまま放置されるか破壊されるかの二択である事は分かった。

「お、おう。もちろん」

「よかったー」

「あ、当ったり前ぇだ。俺は一応幸島家の一員なんだぜ?」

「うん。そーだよねー」

「おう。任しとけ!」


「それじゃ、お家まで飛ばすねー」

「おう――は?」

 振り上げられるナナさんの手――吸い上げられる落ち葉と土埃は、まるでそれを地面縛り付ける鎖か何かのように思えた。

 次々と鎖を引きちぎり……動きを止めた手が振り抜かれた――



 ◆



 その日の夕刻。 

 帰宅した幸島は、我が家を前に呆然と立ち尽くした。

 玄関を中心に壁が粉砕され、室内に大きな岩が転がっていた。衝撃で窓も粉砕したらしく、窓枠に僅かばかりのガラスが残っていた。

 数ヵ所にタケノコと思しき物が突き刺さっており、まるで巨大なショットガンでも撃ち込まれた様な惨状だった。


「なんだよコレ……」

 燃えた扉を外し、とりあえず付けておいた(すだれ)は岩に絡まり、これでもかと無惨な姿を晒していた。

 その時、幸島の足にフワフワしたものが触れた。

「ナナさん……」

「コージマお帰りー」


「ナナさん大丈夫だった? 怪我とかない?」

「大丈夫ー、外に居たからー」

「そっか……よかった」

 と胸を撫で下ろす幸島を尻目に、「ごはんー、ごはーんー」とナナさんはそそくさと家へ入った。

2019/8/27:誤字脱字等修正

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