雫に反射し葉がきらめく
ふわっと広がるドレス。
青空の色をしたスカート部分には繊細な蝶の刺繍とひらひらとしたレース。
白いタキシードにも、小さく蝶の刺繍がされている。
どちらも着ている人物によく似合っていた。
「まほくんまほくん、わたし、だいじょうぶかなぁ?」
「だいじょうぶだよ、まな。とってもきれいだよ」
「わぁ、よかった!まほくんもとってもにあってるわ」
あぁ、ほのぼのする。ここがパーティの会場じゃなければよかったのに。くるり、と振り返った双子様が言う。
「「あやめもよくにあってるよ!」」
「ありがとうございます、おにいさま、おねえさま」
息ぴったりですね、真秀様、真菜様。
ところで、私、もうこの場から離れてもいいですか?
奥様、旦那様とだけは会話したくないので。
「あ、まほ!」
「まなちゃん!」
「りい」
「めいさん」
後ろから声がして、振り返ってみると真秀様、真菜様のご友人、宇月原家の双子様。梨衣様と芽依様がいた。
真菜様と芽依様は手と手を取り合ってジャンプしている。うん、嬉しいのはよくわかるのですが、落ち着いてくださいな。
「そうだわ!あやめ、こっちにおいで」
「ん、どうしたの、ですか?」
「めいさん、わたしのいもうとの、あやめですの」
つまり、真菜様のお友達に私を紹介してくださっている、ということ、ですね。私の方はお庭から姿を拝見していたから知っていたけど、芽依様達はそんなこと知らないだろうし。
妹、と言われたことに、すこしだけ驚いたけれど、表情にだしてはいけない。
「ぁ、ゆいぞのあやめ、です。よろしくおねがい、いたします」
「あ、まなちゃんのおともだちの、うつきはらめいなのです!よろしくなの!」
「ん、こっちはぼくのゆうじんの、りいだよ」
「りいです。めいのふたごのおとうと、だよ。よろしく」
「ぇと、よろしくおねがいいたします」
まな、さっきのしょうかいのしかたは、ちょっとちがうよ、と真秀様が言う。
あ、妹じゃないってことですか。
「まちがいなんてないわ!」
「ぼくのいもうとでもある、から」
すこし離れたところで真菜様と真秀様が話している。
内容は、聴こえなかった。え、や、どこが違ったんですか?やっぱり妹の部分でしょうか?
「あやめ、あやちゃん、あーちゃん、あめちゃん、ね、なにがいい?」
「ふぇ?ぇと、なにが、ですか?」
「んー?よびかたなの!」
なるほど、呼び方。え、呼び方?
「ぁ、おすきに、よんでください、です」
「あーもー、あやめさんがこまってるよ、めい」
「むー、りい、うるさい、じゃあ、あやちゃん、ってよぶの!」
そんなふうに呼ばれるのは初めてで、どんな反応をしたらいいのかわからなかった。
こちらでは由井園様、お嬢様、だったし、前と変わっていないのは幼馴染様のあやめちゃん、という呼び方だけだろう。
あ、でも、真菜様と真秀様は違うんだよなぁ。
「はい、うれしいです、めいさま」
「あれ、わたしたちがいないあいだになにおはなししてたの?」
「ぼくたちがいないあいだに、なにをしてたのかな?」
にっこり、とひまわりのような笑顔の真菜様と天使のように微笑む真秀様。
「うーん、まほくんにはヒミツなの!」
「ねぇ、りい、なんのはなし?」
「あやめさんをなんてよぶかのはなしだよ」
「もー、なんでいっちゃうの!」
ぽかぽかと芽依様が梨衣様を叩く。
と、そこで声がかかった。
「芽依、梨衣、そろそろご挨拶に…」
どうやら芽依様と梨衣様のご両親みたいだ。
「めい、まなちゃんたちとおはなししてるの、おとうさま、おかあさま」
「りいも。まほとはなしてるね」
双子様がご両親に言う。
双子様のご両親は奥様と旦那様にご挨拶をしてから、双子様をお願いしてもいいかと聞いていた。
双子様のお母様は奥様とこの場に残ることになったようで、楽しそうにお話をしている。
と、そこで、嫌な予感がしたので、そっと、真菜様達から離れて壁の方へ移動する。
「あやめちゃん!」
そう、私に声をかけてきたのは幼馴染様だ。
そして、幼馴染様の隣にいる人物がおそらく、響野浬様、だろう。