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旧、明日の天気は。  作者: 揺り桜
舞台裏、巡る季節数え
3/68

茜の空

修正点がありましたので、直した部分があります。

また、後書きの方に世界観の説明をほんのり書き足しました。

2019 3月28日


前世なんてあるんだな。

いや来世があることに、記憶が残ってるものなんだってことに驚くべきなのか、感心することなのか。ううん。



「絢明お嬢様?」


あ、いけない。使用人さんの話きいてなかった。なにか言わないと。


「あ、えと、わたし、どれくらい、ねてた?」

「二日ほどです。お医者様は貧血だと仰っておりました」


二日とはなんというか。ちょっとした眠り姫だね、私。


「ですが、貧血だけにしてはなかなか目が覚めなかったので心配しました…目が覚めて良かったです」

「ぅ、あ、ごめ…ありがとう…です?」


ごめんなさいと言おうとしてやめた。前に言ったとき使用人さんが悲しそうな表情をしていたから。

でもやっぱりごめんなさい。目が覚めなかったのは多分、かつての記憶を整理していたからだと思います、使用人さん。


「お嬢様にそのように言われることを、私はしていませんよ」


苦笑いをして、使用人さんが言う。


「ん、でも、ありがと、です」

「…すぐに水をお持ちします。少々お待ちください」


話してみるとがらがら声だった。喉が渇いていたようだ。倒れる前も喉が乾いて目が覚めたのだから、そりゃあカラカラだろう。

だけどわざわざ持ってきてもらうのは申し訳ないと思う。

扉の前できれいなお辞儀をして、使用人さんは部屋から出ていった。


ここにきてしばらくたつけれど、ああいう扱いにはいまだに慣れない。たぶんずっと慣れないままなのだろうなと思う。

きれいな立ち居振る舞いのいいお手本があちらこちらにあるというのはとてもありがたいことなのでぜひとも見習いたいところなんだけど――それよりも。


まずは状況の確認からしていきたいと思う。わからないことだらけなので確認というか、記憶のすりあわせというか、とにかくまとめてみよう。

いつも私の側に居てくれる使用人さんの名前は、古川 (のん)さん。私の世話(監視)役の人で、気の毒な人。


私自身のことについてはすらすらと思い浮かぶところもあれば虫食いのようにところどころ抜けてもいて、まったくわからないところもあるような…?なんだろうこれ。でも大事なことは抜けていない。

私は由井園絢明(ゆいぞのあやめ)。先日誕生日を迎えたため今は5歳。2つ上の兄と姉がいて、たぶん仲は悪くも良くもない。どちらかといえば良好。兄姉と私は親が違うため、血が繋がっていないので私は別邸で暮らしている。私の母はずいぶん前に亡くなっていて、旦那様(ちち)が私を引き取った。まぁ、世間体を大事にした結果だと思う。本邸には旦那様と奥様、兄と姉がいて、別邸に来ることはほとんど無い。


それが私の現状だ。


コンコン、とノックの音がした。


「あ、はい、どうぞ」

「失礼します、絢明お嬢様。お水をお持ちいたしました」


どうぞ、とお水を渡してくれた。


「ありがとです、ふるかわさん」

「!、いえ、当然のことですから」


私がお礼を言ったり謝ったりすると、いつも使用人さんは困ったような、悲しそうな表情をする。でも私は私が大事だから、理由がわかっていてもやめることはできない。


「ありがとってわたしがいいたいだけだから」


使用人さんは私の面倒をみないといけないから当然なのかもしれないけど、それは簡単に消えてしまうもので、私はそれを当たり前だと受け取ることはできないから。


「…では、私はこれで失礼いたします。絢明お嬢様」


また、困ったようななんとも言えない表情をして、それをすぐに隠すと使用人さんは部屋から出ていった。


「あいまいなわたしには、あなたはもったいないよ」


私の立場は曖昧で。私の母は奥様ではないし、それに。


由井園家は裕福だ。旦那様が会社を経営していることと、それなりの名家であるため、だと思う。どれくらい裕福かというとパーティとか開いちゃったりするくらい。あと他のお家と比べてお屋敷で働いている人たちの人数が圧倒的に多いことからもわかるだろうか。


兄や姉はご令息、ご令嬢で、私はその時の状況によって立場がかわる、曖昧な存在。お嬢様と呼ばれることもあれば、そうではないときもある。たいていは後者だ。だからこそ、私は私の立場をしっかりしたものにするために、考えて行動しないといけない。

そういえば、かつてを思い出してからだいぶ考えがまとまるようになった。そもそも私が私ではなくなったような気もするし、ふわふわとしていた足元がかろうじて歩ける瓦礫に変わったというか、そんな感じがする。それは"わたし"を思い出したことによる影響だろう。ありがたいことだ。


曖昧な私を明確にするためには何もかもが足りない。

足りないものを補うためになんだってした。これからだって。


「ほんもたくさんよんだ。でもたりない。べんきょうも、おにいさまたちよりできなきゃいけない」


けれど、まだまだ足りない。使いやすい駒だと思ってくださるならいい。そのほうが動きやすい。

警戒されてしまうより侮られている方がいい。




そうやって、私は私がここにいる理由を探さなければいけない。だけどね、でもね、たまに思ってしまうんだ。


普通に。

普通の、ありのままの私として。もっとのんびりゆったり、ただのあやめとしていられたらよかったのになぁって。




それはわがままだろうか。


世界観について。


現実の世界とほとんど、が同じですが、スーパー、、アパート、マンション、デパート、などなどのお名前や経営しているグループの名前が違います。


漫画や小説、それらの作者様のお名前、そういった物が違うだけで、国名や地名は変わりません。


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