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旧、明日の天気は。  作者: 揺り桜
舞台裏、巡る季節数え
21/68

忘れた者と見上げる者、深い碧に沈む

『セナちゃん、あれ、なぁに?』

「ちょうちょ」

『ちょーちょ、とんでる!』

『うん、そうだね』

『なんで?』

『はねがあるから』


紅茶のような髪の、幼い子供はこの世界の全てに疑問を抱く。

暗く、陰りのあるブラウンの髪を持つ子供は、全てを見透す。


セナは、一ヶ月程前にこの公園で出会った小春のことを見つめ、口を開いた。


『こはちゃんは、どうしてわたしとあそんでるの』

『ふぇ?だって、あーんな、いじわるばっかより、セナちゃんとあそんでるほうがたのしいもんっ!』

『…そう』

『そうだよ!』


ぜったい、ぜったい、たのしいよ!と言う小春に、セナは笑った。


『わかってるよ、でも、それならセナもこはちゃんとあそんでるほうがたのしい』

『ほんとっ!?』

『ほんと』


でもすこしめんどくさいよ、とセナが言えば、小春は可愛らしい顔を歪め、ひどいっ!と怒った。


『じかんだ。こはちゃん、またね』

『えーっ!もういっちゃうの?』

『うん、おばあちゃんたちがしんぱいだから』

『やだ、だめ、いっちゃだめ!』


こまったな、とセナが呟く。

すると、小春達を見守っていた女性がセナ達のほうへ近寄ってきた。


『もう、わがままいっちゃダメでしょう?セナちゃんが困ってるじゃない」

『だってまだあそびたいもんっ』

『ごめんね、セナちゃん』

『んーん、だいじょーぶ、です』


セナは小春に笑いかけ、また遊ぼう、と約束をした。


その約束が叶うことはなかったのだか。







『いーですか、親友!』

『はいはい、今度は何』

『傲慢って言うけど、これは俺様!しかもちょっとアホの子!かわいくない!?』

『いや、わかんねぇよ』

『おい猫かぶり、猫取れてんぞ』


わたしとわたしの友人がいた。

先程までは違ったように思うのだが、それがどんなものだったか思い出せない。


『俺様は俺様でも、アホの子、という要素が加えることによってかわいくなる!あら不思議!』

『いや、全然理解できないわ』

『はぁ、じゃあどのエピソードが良かった?』

『え、そうね……エピソードというより、ヒロインの過去?』

『あー、あれはね、全攻略対象の全てのエンドを見たあとでわかるんだよ!』

『うわ、めんどくさい』

『だいじょーぶ!だいじょーぶ!我が親友は原稿用紙八枚、君歌について書けるんだから、クリアできるよ!』


クリアする気がないのですが?、とわたしが友人に問いかけるが、あっさりと友人はわたしの言葉をスルーした。そして、パッケージをぐいぐいと押しつけている。


『い、い、か、ら、受け取れよっ』

『い、や、よ』

『チッ…ま、でも、燈愛ちゃんの過去はねー、ゆいちゃんとふかーく、ふかーく、繋がりがあるから!シナリオ制作した奴マジ呪う。でも崇める』


矛盾してる。

ヒロインさんと、もう一人、“ゆいちゃん”とは誰のことだろうか。確かに友人の口から聞いたことがあるはずなのだが。


『あ、なんだっけ、鐘、鐘なんとか』

『鐘鋳穣くん!』

『あ、そうそう、そんな名前だったわね』

『穣くんは癒やし系なんだよ!かわいい!でも強引!』

『あ、うん』

『だってだって、年下だよ!?燈愛ちゃんのちょっとお姉さんらしいところも見れるし、なによりペースを崩されちゃう燈愛ちゃんが見れるんだよ!?萌える!』

『そ、そう』

『そうだよ!』


だいぶ人の減ってきた放課後の教室。

人が減ってきた、とはいえ、まだ残っている人もいる。

もの凄く注目されてますよ、わたし。


『僕じゃ頼りないですか?って!哀しそうな顔で言われて!上目遣い!あざとかわいい!!あざといけど許す!』

『五月蝿い』


同感。

あざとかわいい、ってどういうことだろう。

まぁ、本人に会ってみたらわかるかな。

ゆるゆると、映っていたものが靄に包まれ、雲のように消えてしまった。


もう少し観たかったんだけどなぁ。


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