晴夜、影にまざって
あぁ、今日は月が、よく見えるなぁ。
「あーやーめーちゃん!」
だめだ。現実逃避をしても結果は変わらなかった。
「どうされたんですか、れんさま」
「とくになにもないけど?」
あ、そうですかー。何もないなら話しかけないでくださいよ。
れん、しょうかいして、と蓮様のお隣にいた響野浬様であろう人物が言う。
「あ、こっちはあやめちゃん!でこっちがかいりだ」
「ひびのかいり。はじめまして」
「ぁ、はじめまして、です。ゆいぞのあやめです」
幼馴染様、この方、本当にあなたの友人ですか?
なんだかはらぐ…いえ、なんでもありませんよ、ご友人様。えぇ、腹黒そうだなんてこれっぽっちも思っておりませんよ。
「ゆいぞのさん、よろしくね?」
「よろしくおねがいいたします、ひびのさま」
にっこり、と笑って言うご友人様に私もにっこりと笑いかえす。
ご友人様は利用できなそうね、だって、利用されちゃいそうじゃない?
奇遇だね、私もそう思うよ。でも、互いに利用すればいい、それだけだよ。
「ところでれんさま、あいさつ、しなくていいのですか?」
「おれがいなきゃいけないぶんはおわった」
「そうそう、だからあんしんしなよ、ゆいぞのさん」
にこにこ、にこにこ。
安心だなんて、ご友人様は何をおっしゃっているのかなー?
「よかった、まさかわたしをにげるこうじつになさったのかと」
「そんなことするわけないのにね、れん」
「そ、そうだよ」
おや、語尾が弱くなりましたね、幼馴染様。それに幼馴染様が耳を触るときって、嘘をついているときや、なにかを誤魔化そうとしているときなんですよ?
幼馴染様、私を口実にして逃げたんですね?
「ぷ、く、ふふ」
あーあ、ご友人様も笑うにしてももっとしっかり隠してくださいよ。
「ほ、ほんとに、にげてきたんじゃないから!」
「そうですよね、まさかれんさまがそのようなこと、なさりませんよね」
「も、もちろんだ」
こんなにわかりやすいと心配になるな。
幼馴染様、騙されたりしても知りませんよ。
知らないうちに利用されていた、とか、実は今も誰かの手の上かもしれないんですから。
「あ、そうだ。れん、そろそろおとのみやさんがくるんじゃない?」
おとのみや、音之宮、様?
あちらのご子息、ご子女と幼馴染様の繋がりなどあっただろうか。
「おとのみやさまですか?」
「このまえあちらのおじょうさまのたんじょうかいによばれて、ね」
「おれのかあさまがあちらのおくさまとなかがいいらしくて」
その関係で呼ばれた、と。幼馴染様のお母様とご友人様のお母様は仲が良いはずだから、どちらもその関係なのだろう。
音之宮の宝物。音之宮紫蘭様の誕生会。
私はまだ会ったことがないけれど、兄である音之宮樹様やご両親からとても大切にされている、とてもかわいいお嬢様らしい。
噂や今日集めた情報である。
両親が他家の話をするたびに音之宮家の話もでてくるから集めやすくて助かった。
「どんなかたでしたか?」
「んー、おにんぎょうみたい?あぁ、そういえばれん、みほれてたよねぇ」
「え、は、そ、そんなわけないだろ!」
見惚れてたんですね、幼馴染様。
やっぱりその耳を触る癖、直したほうがいいですよ。
あと、顔、赤くなってますし。
「あ、うわさをすれば、きたみたいですよ?」
「あー、ほんとだ。いっきに騒がしくなったねー」
まぁ、あの音之宮家ですからねぇ。権力バッチリの大手企業ですから。
それを言うなら幼馴染様もご友人様もそうなのですが。
というか、厄介事に巻き込まれる予感がするんだよなぁ。
回避の仕方と今日集めた情報の整理、どっちを優先させるか、まぁ、幼馴染様の反応を見てからでも遅くないだろう。
いつまで誤魔化すの?誤魔化せるなら永遠に、だろうね
ブックマーク、誠にありがとうございます。




