星がきれいですね
桜が舞う。
淡いピンクの絨毯が風で舞い、視界を遮るカーテンのようだった。カーテンの向こうには互いを見つめ合う男女の姿がある。桜が舞い、柔らかく光が差し込むそこで、想いを重ねる二人はどこかの乙女ゲームかなにかのスチルのように美しく、遠い昔に私が観たものそっくりだった。
ただ、彼に選ばれた相手が違うこと以外は。
そんな乙女ゲーのような男女を偽りの言葉と笑顔で眺めていることができるようになってしまった私はきっと、彼の腕のなかでうす紅色に頬をそめ、恥ずかしそうに微笑む彼女とは正反対だろう。
多くの人に愛される天然タラシ。人の感情には敏感なのに好意や自分の気持ちには鈍感。どこまでテンプレなんだよと思わずツッコミを入れてしまいそうになる彼女と、私の幼馴染であり乙女ゲームのメイン攻略対象の一人である彼らの、思いが通じ合った日。
ついでに私が恋を終わらせる日となった今日。
彼女にも、彼にも、気づかれることなく今日を迎えることができたことに私は安堵した。ここまで大変だったのだから、私だって休みたい。
さて、私というサポートがいなくなったあと彼らはどうなるのか。私には未来などわからないから可能性しか考えることが出来ないけれど、彼らと私が納得できる形であればいいと思う。
そのためにもまずは、この砂糖を吐き出せそうなやり取りをしている彼らをからかい、彼女から彼を借りなければならない。
終わらせよう。私のこれまでの物語を。
彼と彼女の恋物語を。
乙女ゲームの運命を。