狼と大神、土と槌
供え物……そうか……だから、握り飯か。
神に動いてもらうには、供え物をして願いをかけなければならないのだ。
おれは倒れたまま、懐から銀紙に包んだままの握り飯を差し出した。潰れて変形し、銀紙にも血が付着しているが、ロボが気にした様子はなかった。
「……じゃあ、これで……アイツを……倒してくれ」
「承知した」
彼女が忍者のように右手の人差指と中指を立てると、おにぎりは光に包まれて消えた。
「地の者より、供物が捧げられた。神として、貴様を征伐する」
ホッケはバケモノとは格が違うと言っていた。
なら、神とは?
「く……く……」
ホッケが呻く。それが、答え。あの狼男が、明らかに狼狽している。
「神の眷属とはいえ、まだ成りたてだ! だったら魔獣の血を引くオレにも分があるはずだ!」
狼男は、半ば捨て鉢に飛び出した。
「無い」
その声は厳かで。
そして神の声とは、すなわち神の鳴る音。
「カムナヅチ」
雷鳴轟く。雷は神鳴。
神の眷属たるロボは、雷を操る力を手にしていた。
その威力たるや――
「ウギャアアアアアア……!! アアアアア!!」
雷の滝がホッケにまともに降り注いだ。
その巨体が一瞬にして燃え上がる。積まれた藁のようにごうごうと。
断末魔の悲鳴だけが響き。
その悲鳴すら燃え尽きて。
狼男は、あまりにもあっけなく、この世からチリとなって消えた。
最初から存在していなかったかのように。
おれにしか見えなかったものが、誰にも見えぬように……。




