信
ああ、バカだなあ。おれって。こんな怪物、相手にするのが間違いなんだ。
――だけど、ロボは一度だって嘘はつかなかった。
だから、彼女が「必ず戻る」、「必ず勝つ」と言ったなら、それは信じられる。
信じて、足掻ける。
おれを頭から引き裂くべく、繰り出されたホッケの爪。
逆に今、ホッケはおれをナメていた。恐怖させるべく、わざと見えるスピードの攻撃だった。
だから、おれはそこに自ら飛び込んだ。
「何!?」
さしものホッケも驚いて目をむく。
自ら飛び込んだ事で、上手く爪では無く掌に頭が当たり、ホッケがよろめいた。
稼げた時間なんてほんの数秒。
それでもいい。一秒でも長く、時間を稼いでやる。
「……くだらん真似を。ひと思いに死ぬのが嫌なら、望み通りいたぶってやろう」
次に繰り出された爪は、当然全く見えなかった。
ミキサーにでもかけられたかのように、全身を猛スピードで何かが切り裂いていく。裂かれた場所に痛みを感じるより早く、次の場所が切り裂かれ、てんでばらばらな痛覚が脳をシェイクした。
服はぼろぼろ、全身至る所血まみれになっていく。それでも、懐に隠した握り飯だけは、両手でかばって守り続けた。
永遠にも思える痛みの嵐。
それが、突然止まる。
おれは、自分が倒れる音を聞いた。
倒れざま、天を見上げるホッケと、夜だというのにやけに明るい空が見えた。
「待たせた」




