土着
……は? 追いかけて来ていた?
何が?
決まってる。あの悪意の淀みが生んだバケモノたちだ。
「自分はここしばらく東京を縄張りとしていたのだが、明らかにおかしいのだ。だって、『アレが減っていた』んだから」
減るわけがないんだ、とロボ。
「土着って言葉あるだろう? 知っている、かな?」
「あ、ああ……」
「言葉通り、妖怪は『土に着く』。土地に着く。いると言われる所にいる。だから土の無い所で自由に動けるモノは、人狼とか吸血鬼のように広範囲に伝承があるようなヤツだけだ」
自分の想像は当たっていたわけだ。
妖怪が土の無い所に居ないのは、当たり前という事か。
「淀みは妖怪と違って都会に滞留するだけだが、少なくとも自発的に移動はしない。減るとしたら、誰かに憑いて行ったとしか思えない。誰に? なぜ?」
「……」
「目を合わせた人間が居るって事だろう?」
確かに、東京でバケモノたちと目が合った気がしたからすぐに逃げてきたんだ。
だけど……まさか、ここまでついてこようとしてたなんて……。
背筋に冷たいものが走った。
「後は簡単だ。バケモノを追いかけて行けばいい。新幹線か、飛行機か……少なくともそれより早く動けるモノはまずいないからな。道々にいるソレを食いながら九州まで来たってわけだ」
鳩がパンくずを食べながら歩くようにね、と続ける。
「……食う?」
「そう。アレは、不本意ながら主食なのだ」
言った顔は、本当にマズそうに歪められている。
そこで、なぜ淀みを食うのか、聞いてみた。
すると、ロボは言った。
「失敗したから」と。
失敗とは何か、と聞くと、
「『吸血鬼じゃなくて人狼を選んだ事』、かな」
と言った。
言葉の意味は正直よくわからないけど、声にはどこか後悔の色があった気がする。
それから、人間と同じ食事では渇きが消えない、とも言った。




