男子高校生の天秤
「す、少なくとも……て、敵意はないんだよな?」
「微塵も」
すっぱり言う。
おれなんかに真偽はわからないけど、嘘を言っているようには見えない。
「そもそも自分は人を食わん。食ったこともないし食いたいと思ったことも無い。性的にという意味なら、食べたくてしょうがないが」
エロオヤジのような発言に、肩の力が抜けていく。こいつ……本当に頭の中はそれしかないんじゃないか。肩の力どころか体中に張り巡らせていた危機感が、音を立てて崩れていく。
「……ん?」
ふと、視線を感じた。
帰宅途中の学生たちが、上の通学路の方からちらちらこっちを見ているようだ。
考えたら、かなりまずい。他の人にはロボは見えないのだから、おれが独り言を言っているようにしか見えないだろう。こんなの級友に見られたら、必死にかき消した「うそつきゆーくん」が蘇るどころか、もっと変な噂が立ちかねない。
「と、とにかく場所を変えよう」
「なるほど。確かに秘め事は見せない方がよかろう。自分はどちらでも構わない、かな」
「まずそれをする前提で話すのやめてくれないかな……」
刺激が強すぎる。何でおれが顔を真っ赤にしないといけないんだよ。ちくしょう。
「……嫌なの、かな?」
「……くっ、答えにくい質問を……とにかく! 続きは場所を変えてからだ!」
男子高校生なんてな! エロに手足が生えただけの生き物なんだよ!
起きてる時間の大半はエロい事しか考えてねえよ!
だとしても! だとしてもだ!
今は命と天秤にかかってるんだ。相手は今後一生絶対おれにチャンスすら来ないであろう絶世の美女だけど、得体が知れなさすぎる。




