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フロウズヴィトニル・ヘテロロボサ
おかしい。おかしいと言えば全部おかしい。
犬の飼い主は、そんな女に気付いてすらいないようだった。
「あ」
そこでおれは気付いた。気付いたが、もう遅かった。
『目が合った』。
琥珀のように綺麗な瞳。吸い込まれるような輝き。非現実的な色彩。
こいつは、やばい。
『こっちの人間じゃない』。
逃げよう、そう思ったが、その瞳に射抜かれて動けない。蛇ににらまれたカエルそのもの。
女は満面の笑顔だった。さながら、ごちそうを見つけた子どものように――
つかつかと歩いてくる女。
すがる様に犬を連れたもう一人を見てみたが、既に散歩に戻ったらしくその背が遠くなっていく。
そうして目を離した隙に、人間ではない何かがおれの目の前まで近づいていた。
にい、と歪む口元。
食われる……! 直感的にそう思った。
が――
「自分はフロウズヴィトニル・ヘテロロボサ。人狼だ」




