狂犬と異常者
二日目のあさが来た。
相変わらず外では《変異者》達のうめき声が聞こえていた。
「あの〜」
肩ぐらいの高さまで伸びた髪に肌が少し白い女の子が話しかけてきた
「ん?あ、えっと・・・」
「鈴木 雪華です。岡山さんが集まってくれと言ってるんですが・・・」
「わかりました。すぐ行きます」
岡山の所に行ってみると既にみんなが集まっていた。
岡山を中心に何か話してるようだ。
「・・・・だが、意義あるものはいるか?」
なんの話をしてるんだ?
「あ、おはよ〜、けんちゃんはどっちに行く?」
寝癖頭の聡一郎が訪ねてきた
「え、どっちって何が?」
「調達班か放送室に残るか、聞いてなかったのか?岡山さんが言ってたぞ。まぁー俺は残るけどな」
「は、なんでだよ!」
「何も食料が足りないんだとさ。武器も少し欲しいし。あとは外の様子が知りたいんだってさ。で、どっちなんだ?」
「どっちって言ったって、・・・・俺は・・外に出るよ!遥達を探しに行く。」
「そっか、わかった。見つかるといいな!」
話し合いをした結果、
調達班
おれ・雪華さん・田所・和田
放送室に残る
聡一郎・愛理ちゃん・岡山さん・谷口先生・正樹
に決まった
「気をつけていけよ、けんちゃん。」
残る聡一郎達を背に俺たちは放送室を出た。
廊下に響く足音。
カタ・・カタ・・カタ・・カタ・・
昨日まで喋り、遊び、笑いあっていたであろう生徒達が見るも無残に転がっていた。
あたりを漂う死臭、生きた心地がしなかった。
落ちてる武器がないか探していると
・・・・ッふ
(ん?あいつ今わらったのか?・・・そんな訳ないか)
和田に対して不信感を抱いていると
「おい、健吾。食堂の物全部取って落ちてる武器も拾って早く帰るぞ!」
ワックスでセットしたような金色の髪、背が高く
おまけにガタイもいい。いかにもヤンキー姿の生徒が話してきた。
「そ、そーだな。早く帰ろう!」
田所知り合ったのは中学の時。野球の試合で何回か戦い友達になった。
当時の彼は少し気が弱くスポーツ刈りでどんな時でもボールを触っている、野球少年だった。
それが今となっちゃ学校でも、他校でも《狂犬》と呼ばれるほどの不良だ。
「なぁ〜田所、一つ聞いていいか?」
「・・・なんだよ。」
不機嫌そうな顔で俺を見る
「なんで、野球やめたんだ?あの頃はあんなに好きそうだったのに、今となっちゃ、、」
「それ以上喋ったら殺すぞ・・・・」
「・・・ごめん。」
田所を先頭に俺たち5人は沈黙のまま食堂に向かっていた。
ところが
カタ・・カタ・・カタ・・・カタ・・・ッドン
「いってぇーな。ふざけ・・・・・」
俺たちは忘れていた・・心の奥底に眠っていた恐怖を。
ウウウゥゥゥゥッヴヴァ〜〜
「う、うわぁ!」
片方の目が無くなり全身に黒い血がコベリついた《変異者》だった。
俺は衝撃のあまり床に倒れた。
「一人だったら何とかなる、離れるなよ」
「は、はい!」
田所はアイスピックを手に構え、雪華さんを背中に隠し、
グシュッズブズブ・・・・
《変異者》の頭にアイスピックを突き刺すと、
「やっぱり頭が弱点か・・・よし行くぞ!」
「ばか、周りを見ろ!!」
周りには音を聞きつけたのか匂いに反応したのかわからないが10体20体の《変異者》達が俺たちの周りを囲んでいた。
(こんな所で死ねるか、まだあいつらにもあってないのに・・・くそ!)
諦めたその時だった
「先輩・・・諦めるのはまだ早いですよ。」
「え?」
和田だった
血だらけの木刀を片手に笑い声を上げながら《変異者》達を次々と倒していた。
その姿は生き生きとしてとても楽しそうだった。
「今のうちだ、逃げるぞ!ついてこい!」
和田が《変異者》達を倒している間に田所が雪華さんを連れ、やってきた。
「おい、行くぞ何やってる!」
「で、でも和田が・・・」
「放っておけ、あいつは異常だ。今のうちに行くぞ!はやく」
確かに、甲高い笑い声をあげ《変異者》達を次々と倒す和田は誰から見ても異常にしか見えなかった。
しかし、それ以上に俺は興味を示した。
「アァーはやくこい!」
田所は俺の手を引っ張り、雪華さんを連れ走り出した。
結局俺たちは和田を見捨てた
「萩野先輩に会えるといいですね・・・」
「え?」
振り返ると和田の姿はなくそこには無残に殺されてる《変異者》たちや数10体の《変異者》しかいなかった。
初めて戦った《変異者》達を背に俺たちは長い廊下を走った。