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勇者の嫁　１

　結婚は人生の墓場というヤツがいるが、墓場なんて大したことはねぇな。墓場なんてせいぜいゾンビとかゴーストとか出てくるくらいだろ？　あぁー、死の山バルドゥスであったアンデッドキングはヤバかったな。あいつ、１００回倒しても蘇ってくるんだもんよ。もう２度と戦いたくねぇな……。

「結婚しました！　妻を紹介したいので、会いに来てください！」

　テガミバチが運んできた一通の手紙を見て、オレは固まった。差出人の名前は……あいつか。って、あいつが！？　結婚だと！？　どんなイイ女に言い寄られても興味ねえって面してやがったのに……。驚きと困惑。そして好奇心。世界を救った勇者の心を射止めたのは、どんな女なんだろう。

　そう、あいつは勇者。かつて世界を闇と混沌に陥れた魔王を倒した、勇者カイルだ。

　この名前を見るのは５年ぶりか。カイルを含めた友人たちの顔、そして共に冒険した日々が鮮明によみがえってくる。そういや、あいつら元気にしてるのかな。

　いい機会だ。会いにいくか……あいつらに。オレは旅支度を始めることにした。雲ひとつない青空を仰ぎ見る。いい風が吹いている。うん、いい冒険日和だ。

　カイルは南の大陸リディルというところの、さらにその最南端に住んでいるという。なんだってまぁ、そんな辺境の地に住処を構えたのやら。まぁ、おかげでこうして久々に外の世界に触れるいい機会にはなったが。

　南の大陸といえば、思い出すな……あの死闘のことを。魔王と同等か、それ以上と呼ばれた伝説の怪物との死闘のことを。ああ、思い出すだけで古傷が痛む。もう２度と出会いたくないもんだぜ。

　船に乗り込んだ俺は、じっと水平線を眺める。５年前はここらも魔物のなわばりだったが、今は静かなもんだ。

※更新中