執筆のヒント:キャラやセリフの書き分け方
キャラの書き分け出来ていますか?
似たり寄ったりな性格になってしまったり、誰が喋っているのかわからないセリフになっていませんか?
今回のハウツーでは、技術を磨く上で見落としがちなコイツをピックアップしたいと思います。
ぶっちゃけて言ってしまうと、私も完全に書き分け切れてはいません。
元がゲーム畑の人間ですので、セリフの近辺にネームプレートが付いてること前提の世界でやっていました。
セリフ単体だけでキャラを判別させる。これって簡単なようでメチャクチャ難しいです。誰もがどこかしらでうっかりミスをしてしまいます。
……毎度ながら前置きが長くなりました、では本題に入りましょう。
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[セリフの書き分け方]
いくつかの方法をご紹介いたします。
幅広い層の為に初歩も紹介しますので、必要ない部分は飛ばして読まれて下さい。
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・特徴的語尾
多少経験があれば誰もが知っている方法です。
末尾に「~~だべ」「~~ずら」「~~りゅん」「~~にゃも」などなどを付ける方法です。
弊害は説明する間でもないでしょう。
ドラマ系など写実性を重視したジャンルと相性が悪いです。
一方、キャラの判別という面で見れば効果てきめん。あまりに効果的なのでついつい頼り過ぎてしまうのもわかるくらいです。
残念ながら、この便利過ぎる面が横着として目に映るのでしょう。でも開き直って使うとやっぱり便利です。
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・それ以外の方法
変な語尾使うにしても全キャラに当てはめるわけにもいきません。
なら別の方法も使いましょう。
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・前後の地の文で話者をピックアップ
前後でそのキャラに触れておけば読者の意識がそちらに向きます。
そうすると、このキャラのセリフなのかなと読者もある程度の推測を付けることが出来ます。
例文にするとこうです。
――例文――
「どうした?」
「いやぁそれがさ……」
話の途中なのに彼が急に腹を撫でた。
それからモジモジとはにかみながらこちらをうかがい見る。
「その話、どれくらい続くんです? 俺腹減っちまったよ」
――――――
こんな感じで動作や態度を描写すると、読者もそれだけ流れを追いやすいです。
ただまあ一挙一動描写してゆくと地の文が増えてゆくので、折り合いを付けましょう。
それともう一つ注意があります。
上の語尾の項目で触れましたが、簡単な手法というのは使い過ぎてしまうものです。
そこで注意したいのが
「~~はそう言った」って表現です。
これを不注意に多用すると読者は拙さを覚えてしまいます。
セリフだけで一目瞭然のところで使えば、そんなのわかってるってばっ! って印象を与えるでしょう。
なので普段はこの「~はそう言った」を封印しておくことをオススメします。
こういった直接的な表現は、話者が誰であるかを、読者にどう説明したものか本当に悩んだ時に頼りましょう。
何度も何度も、誰が喋った誰が喋ったと繰り返しては、そりゃただの議事録です。
ですから遠回しに、前後の文面で判別出来るようにほのめかすのです。
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・キャラの自称や相手の呼び方を使う
私、わたし、あたし、俺、僕、我が輩、我、朕。
自称をしっかりぶち込めばそれだけ読者も判別しやすくなります。
相手の呼び方も同じです。
下僕だの貴様だのテメェだの貴方様など、相手に対しての呼び方がキャラの自己主張になります。
キャラとキャラの関係性を使う方法なので、話しかけた相手が誰なのかもすぐにわかります。
このわかりやすい表現っていうのが、読者からするとスラスラ読めて気持ち良いものです。
この手法、結構オススメです。
ついでに人間関係も広げやすくなります。相手を愛称で呼べば仲良し、フルネームで呼べばキッチリ、姓だけで呼ぶと他人行儀あるいはホントに他人。
いわばクッキリした人間関係それすなわち、わかりやすい話者の書き分けに繋がると言えましょう。
ちなみにデメリットの方ですが、ちとセリフがしつこくなります。
私、お前。私、お前。俺、あんた。俺、あんた。って感じで単調化します。
主語を略すのが日本語的な自然さでもあるのですが、その自然さばかり追求してよくわかんないんじゃしょうがないです。
なのである程度妥協しましょう。
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言葉っていうのは先人の作った概念を借りて表現するものです。小説執筆でもそれは変わりません。
他人の言葉を借りて表現する以上、暗黙のルールとの付き合いになります。
そのルールの上で言えば、日常会話の文法から多少外れても許されます。ちょっとだけ開き直りましょう。
これも楽だからって頼り過ぎると、以下同文でございますが。
――例文――
例
「俺よぉ、最近気づいたんだけどよ。アンタらもしかして……レズだろ?」
「ち、違うわよっこのボケちんっ!」
「あーら今さら気づきましたの? わたくしたちそういう関係ですの」
「ちょっ、ちょっとお姉ちゃんっ?! サラっと嘘吐かないでってばっ!」
※自称が違うだけで見分けやすいです
※自称が被ったら、相手の呼び方や言い回しで差別化しましょう
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・最後に裏技
なんかコレ誰喋ってるかわかりにくいかな?
ってふと思った時の貴方にオススメの裏技があります。
セリフ作った後からアレコレこねくり回して話者をほのめかすって、結構これ頭疲れるんですよね。
もう前後の地の文が固まってたりすると、余計に動かせない、変えれない、詰んじまった感が広がります。
で、裏技です。
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・困ったら余計な一言を言わせよう
一言そのセリフに追加するのです。
そのキャラがいかにも言いそうなセリフを。
便利なだけに乱用はオススメしませんが、これ一発で解決します。
――例文――
例
「……というわけです。なのでここは正面突破こそ王道、奇策で勝ったところで相手の心をくじくこと叶わないでしょう。……ふう、それはそうと戦場でこんな良いお茶が飲めるとは思いませんでしたよ」
※読者はこう思うはずです
※なるほど、こんなにお茶が好きな人となればあの人だな……。と。
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ついでにキャラの癖や人間味を再アピールしちゃったり出来ます。
ストーリーにそってセリフを喋るだけではなかなかキャラって立ちません。
隙あらば不自然にならない範囲で、余計な一言を言わせてやりましょう。
これすなわちキャラの個性を強調しつつ、かつ難しく考えなくとも読解出来るセリフを生むコツです。
例えるなら弁当に付ける漬け物みたいなもんです。
それに文句言うヤツはいません。
むしろあるとご飯が美味しいのです。
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・最後に、キャラの性格面の書き分け方
さてキャラの個性を書き分けるコツですが……。
そこは難しく考えずいろんなキャラを書いてみましょう。
一度書いたキャラはそうそう自分の中から消えません。
設定上の差別化も効果がありますが、単純に自分が書ける人格のレパートリーを増やすのも大事です。とても。
このレパートリーが不足していると、キャラクターオール俺、的な現象が起きたりします。
「お前の話、主人公の性格毎回同じだね」とか言われちゃいます。
設定を別々にしたところで、書ける性格のレパートリーが足りなければ同じになってしまいがちなのです。
だから色々書いてみましょう。鶏が先か、卵が先か、って話ですが、増やしたレパートリーは貴方を裏切りません。
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[まとめ]
・特徴的語尾
語尾を工夫すると一目瞭然。
お好みに合わせて使っちゃおう。
・前後の地の文でカバー
前後の地の文で誰が喋ってるのかほのめかそう。
「~~はそう言った」みたいな表現は使いすぎないこと。
・キャラの自称や相手の呼び方を工夫
相手の呼び方で人間関係がわかる。誰が誰に話かけているかも。
自称もばらけさせておくと被りにくいのでやりやすい。
・余計な一言を言わせよう
セリフの書き分けに困ったら、そのキャラしか言わないような、どうでもいい一言を加えましょう。
それだけで誰のセリフかわかるようになる。
・キャラの性格の書き分けは設定だけじゃ足りない
書ける性格のレパートリーを増やそう。
レパートリーが少ないと、同じ人格を複数のキャラに当てはめて作ることになる。
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以上、キャラの書き分け方でした。
作者だけしかセリフの流れが読めてないことって、わりと多いので気をつけましょう。
わかりやすく読者をエスコートしていけば、それだけ読者もストレス無く読むことが出来ます。
話者を意識して書いていけばそれだけ貴方の小説が読みやすいものとなるでしょう。
伝わらなければ意味がありませんので、時には自然さを犠牲にしてわかりやすさを優先するのが大事です。
あらゆることに言えますが、それが出来たら最初から苦労はない。
というお話。