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奴隷になって異世界統一  作者: ヤガミ 光
1/9

プロローグ

「あら、やっと起きた」


 重い瞼をうっすらと開くも、眼球に薄い膜でも引っ付いているかのように、辺りがぼんやりとしてよく見えない。


 意識がはっきりとしてきたかと思いきや、また遠のいていく。


 途切れ途切れの意識の中、声だけは鮮明に聞き取ることができた。


「辛い? 辛いわよね……でも、大丈夫よ?」


 声の主は、俺の頬を指先でなぞる。


 ゾクゾクとするような不思議な感覚に陥るが、それがとても、心地良く感じた。


「あなたと私が組めば、世界は私たちのもの。あなたの願望、なんでも叶えられるわ」


 やっと、やっとだ。

 やっと、この世界を手に入れられる。

 やっと、俺は救われる。


「私たちの勝利しあわせを手に入れましょう?」


 そうだ、俺はやっと幸せに……幸せ?


 その瞬間、頭の中に電流が走り、意識が覚醒した。


 それでも、視界はぼんやりしたままだ。


 さらに、あることに気づいた。


 手足に枷を付けられ、身動きが取れない。


 何度、腕に力を込めても、鎖が唸る音が生じるだけだった。


 相手に飛び掛かることもできない。


 だから、


「――言っておくが」

 お前に臆せずに、


「俺は」

 俺の勝利しあわせは、


「あの子を幸せにする」

 ことだ。


 あの子を絶対に救ってやる。


「……そう」


「でも、大丈夫」


 あ、あれ……?


 気づいた。


 気づいてしまった。


 刃物で、腹部を何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も……突き刺されている。


 刃物が内部に押し込まれると、俺の肉体はそれを離さんと吸いつき、強引に抜かれると、血が噴き出る。その繰り返し。


 気持ち悪い感覚だった。


 いっそ、早く死んでしまいたいと思うほどだ。


 そう思った瞬間、俺の口角は不気味なほどにつりあがった。


「ふふふ、壊れるにしては早すぎないかしら?」


「は、ははは……」


 今も尚、刃物による拷問は終わらない。


「大丈夫。今は苦しいけど、すぐにあなたを私のものにしてみせるわ」


「無理だな」


「……どうしてかしら?」


「いっそ早く死んだ方がマシだ。すごく苦しい。でもな、その程度の苦しみ、たいしたことないんだよ」


「……そう、楽しみだわ」


 刃物が抜き差しされる音は延々と続いた。


 徐々に眠気へと誘われていく。


 ザク、ザク、ザク、という音に比例して。


 それからすぐに、俺は意識を手放した。


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