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七話 《竹林の戦い》

森林、というより竹林という方が似合うだろうここには竹林ならではの静けさは今は全くなかった。

周囲の竹はまるで芝刈りにかけられたかのようにザクザクと切り倒されている。まぁ、そのほとんどは俺がやったのだが。

「そこ!」

ボケっとしていた俺の背後から戦が槍による刺突を放ってくる。

俺は振り向くでもなく、迎撃するでもなく、ただ、その場にしゃがむ。

上半身を狙っていた刺突は空振り、そのまま俺の前へと戦の身体が抜ける。

目の前には隙だらけの背中。

「もらったぞ!」

容赦なく斬撃を放つ。本来なら直撃は確実だ。本来ならな。

ギィン!と音が鳴り、俺の斬撃は間に入ってきた剣によって弾かれた。

流石のコンビネーションだな。

俺がよろけている隙に双子は俺から距離を置く。

久々に楽しくなって腹の奥から笑いがこみ上げる。

「流石は俺のライバルだよ。しばらくぶりのハイだ」

「やれやれ、こちらには楽しむ余裕なんか無いっていうのにね」

「そっちだって割と本気じゃないのかな?」

「まぁ、そうだな。今出せる範囲では割と本気かな」

嫌だね、力に制限をかけられてるってのは。自由に戦えないじゃないか。

「お互い面倒な能力だからね、僕たちは」

戦が冗談交じりにそう言う。

実際に俺たちは一切オーラを使ってないのだが。

「おしゃべりはこれくらいにして、続きと行こうか」

つるぎけんを構え直す。

「ちょっと待て双子。そろそろオーラ解放しようぜ。このままやっても埒があかない」

「そうだね、そろそろ飽きてきちゃったからもうちょっと本気を出していこうか」

「よし、それじゃ失礼して」

瞬間、風が吹き荒れるとともに、俺の体がオーラを纏う。

トランサーは通常時でも常人を超越したスペックなのだが、それはオーラを纏う事によってさらに跳ね上がる。

未だにオーラについては完全に解明されてはいないが、まぁ、俺にはそんなことはどうでもいい。

ただ戦う。それだけだ。

俺が纏うオーラは灰色に近い暗い白色。

双子が纏うオーラは白は白でも輝き、神聖さを感じさせるような白。

人それぞれに根源があり、人それぞれオーラの色や質は違うのだが、流石双子といったところか。オーラ然り、コンビネーション然り。

「さぁ、ここからが本番だよ」

「第二ラウンド開始だ」

さっきと今では双子の印象がまるで違う。

さっきまでは飄々としていたのに、今の双子はその名に恥じぬ聖人のようだ。

双子のオーラは伊達じゃないってことだ。

「行くよ」

そう小さく剣が呟いて双子が同時に飛び込んでくる。

さっきまでとは動きが違う。

だがそれは俺とて同じ。

剣の斬撃を受け流し、戦の刺突を紙一重で避け、そのまま軽く前転で距離をとる。

「二対一で抜き身は辛い。鞘を拾わせてもらう」

俺が今いるのは鞘を突き立てた場所。ちゃんと計算して動いてたからな。

鞘を地面から引き抜いて、刀を納める。

「さぁ来い。次の一撃で決めてやる」

左に身体を半身に開き、少し腰を落とす。

右手を少し返して腰に当てた刀の柄に当てる。

居合、抜刀術の構え。

間合いに入ったものは確実に両断する必殺の一撃。

「ずるいなぁ、それ。絶対にこっちから行かないといけなくなるじゃないか」

まぁそうだ。居合とは相手が間合いに入ってくるまでは全く動じずに待つものだからな。

双子はやれやれと首を振る。

「まぁ、それでも行くけどねっ!」

再び双子が飛び込んでくる。

たださっきの状況と違うのは、俺が居合の構えをとっているということ。

居合の構えをとった時点で必ず剣士の間合いが出来る。言ったように必殺の間合いが。

そこに飛び込むということは命知らずと同義。

そこに恐れず向かってくるとは。だからこそ俺の好敵手なのだ。

「ハアッ!」

気合いとともに刀を抜く。

瞬間、全てを斬り裂いた。

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