六話 《第一部隊VS第七部隊 開幕》
午後一時になる10分前。
第七部隊総勢5名と第一部隊総勢42名は向かい合っていた。
向かい合うと言っても、お互いモニターの向こうにいるわけなのだが。
今いるのは今回の試合の俺たちの陣地のようなものだ。まぁ、更地に白線を引っ張っただけの簡易なものだが。
目の前に浮いている透明なモニターには第一部隊の隊長、空都政宗を映し出している。
すると、突然咳払いが聞こえてきた。
「さて、両部隊とも準備は整ったかね?」
モニターの右側に黒い背広を着込んだ男性が映し出される。
聖杯学園学園長、聖義坂。
確か、前までは警察と呼ばれていた機関、《メシア》の実力者の中でも五本指に入っているとか。
学園長は多忙で学園にいることなどほとんどないはずだ。
「そう驚いた顔をしないでくれ。折角仕事を切り上げて来たんだ。最低の部隊と最強の部隊の対決、大いに楽しませてくれ」
飄々とした口調ながらも、俺は学園長の言葉に重みを感じていた。
もちろんだ。学園長の前でアピールするチャンス。名誉挽回と行こうじゃねぇか!
「さぁ時間だ。始めたまえ」
そう言葉を残して、学園長は映像ごと消えた。
再びモニターいっぱいに第一部隊の面々が映し出される。
「空都、双子に伝えてくれ」
俺は空都に話しかけた。
「ん、何だ?」
「森林エリアに来い、そう伝えろ」
俺がそう言うと、もとより分かっていただろうが、あいわかった、と頷いた。
「それでは始めるぞ、第七部隊。精々我らを屠ってみろ!」
「言われなくともやってやるよ、第一部隊」
モニターが消え、パァン!と試合開始のスターターの音が鳴り響いた。
俺は宣言した通りに森林エリアにやってきた。
ここの演習場は馬鹿みたいに広く、サッカースタジアムの3倍の広さの更地エリア、更地エリアには広さでは負けるが、一度迷うと中々出られない森林エリア、東京の街を程々に再現した市街地エリアがある。
そのうちの一つ、ここ森林エリアは大人数でも迷い易いため、試合の際にはあまり使われない。だから俺はここを指定したんだ。あいつらとの闘いにな。
すると、タイミングを合わせたように藪を掻き分け、二つの影が現れた。
「よう、双子。今日こそ決着をつけるぞ」
「そうだね。そろそろ白黒つけたいところだよ、まったく」
「牧野くんと闘えるのを楽しみにしていたよ」
聖戦と聖剣。
この二人が俺のライバルたちだ。
学園長の子供でもある。
二人は双子で顔はそっくりだが、髪の色が戦は黒髪に白のメッシュが入っていて、剣は白髪に黒のメッシュが入っている。
それと、戦が男で剣が女だ。
「さっさと始めようぜ。時間がねぇ」
双子は、あはは、と無邪気に笑った。
「うん、そうしようか」
「試合の決着がつくまえに私たちの因縁に決着をつけよう」
俺は左手に持っていた刀を両手で前に構える。
反りを下にして少しだけ引き抜くと、落ちてきた葉が刀身に触れ、そのまま真っ二つに切れて落ちた。
「流石だ、俺の刀。今日も最高に斬れやがる」
刀を引き抜き、鞘を地面に突き立て、刀を正眼に構える。
「流石僕らのライバルだね、剣」
「そう来ないとね、いっくん」
二人も己の獲物を出現させる。
戦が持つは、かの聖槍。
剣が持つは、かの聖剣。
それらが放つオーラは伊達ではない。
彼らの口調もまた、学園長のように飄々ではあるが、彼らは強い。自慢のライバルたちだ。
「さぁ、行くぜ!」
一本の刀と、二本の神器がぶつかり合った。