五話 《宣戦布告》
「ふっ、随分と楽しそうにしているな。第七部隊」
突然の第三者の乱入に俺たちは声の方へ視線を向けた。
「お前かよ...」
半ば予想はしていたが、的中したらしたでため息が出る。
そこにいたのは第一部隊の隊長。
名を空都政宗。
別段嫌いというわけではないが、付き合いづらいタイプ。
「って、何ちゃっかり俺たちの隣に座ってんだ」
空都はシルヴィアの隣の席に座っており、その前には瑞希さんと同じ焼き魚定食が置いてあった。
「別にいいだろう、これは皆の席だぞ?」
そう言われればそうなのだが、普通、仲良く談笑しているグループに一人で突っ込んでくるか?
空都を一言で表すなら大胆不敵という感じだろうな。
「それはそうと、今日の試合はお手柔らかに頼むぜ?」
地味に席が離れているため、声を張って空都に話しかける。
「それはこちらの台詞だ。少なくとも俺は第七部隊の実力を知っているのだからな」
最低の部隊は伊達ではない、と空都は付け足す。
「そりゃどうも。それでもこっちは本気で行くけどな。そこまでしなきゃ危うい」
俺がそう言うと、何が可笑しかったのか空都が笑った。
「そう謙遜するな。もとより俺は轟と戦うことができればいい」
俺の横で轟が大きなため息をついた。
「何なんだよ、いっつも俺に突っかかってきやがって」
「当然だろう。貴様は俺のライバルなのだからな」
轟はより一層大きなため息をついた。
空都と轟にはちょっとした因縁がある。
聖杯学園にはもちろんのこと入学試験があって、新入生同士で試合をするのだ。その時に轟と空都が戦い、それ以来空都が一方的に轟をライバルと決めつけている。
まぁ俺には関係ない事だが。
「そんな事よりも、双子は来るのか?いっつもお前らくっついてるだろ」
「戦と剣か。来るだろう。あいつら、第七部隊と試合すると聞いて演習場に飛んで行ったぞ」
「そうか。まぁ俺も双子とやれればそれで満足さ。それ以外はどうでもいい」
突然ポップな音が鳴り、空都がズボンのポケットから携帯を取り出した。
「俺だが?あぁ、もうそんな時間か。了解した、今すぐ戻る」
空都は携帯をポケットに戻すと、少しだけ残った焼き魚定食を持って立ち上がった。
「すまないな、お前たちとの食事は楽しかったのだが、招集がかかってしまった。試合まではあと少しだ。万全を期しておけよ?」
「分かってるさ。お前こそ俺たちを舐めないようにしっかり伝えるんだな」
空都は「ふっ」といつものように笑うと、ではな、と残して離れていった。
「さて、俺たちも行きますか」
「そうだな、隊長殿」
轟がふざけたように言い、最後のカツを平らげた。
さぁ、久しぶりの試合だ。