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四話 《日常2》

ところ変わってここは学食。

瑞希さんが持ってきてくれた資料に目を通して、ある程度策を練ったところで腹が減り、ここにきたというわけだ。

試合は午後の日程が始まる1時からで、今は12時を少し回ったぐらい。腹が減ってはなんとやらだ。

とはいえ、学食は生徒でごった返していた。まあ、いつものことなのだが。

ほとんどの生徒が学食で昼食をとるからだ。弁当を持ってきている連中もここで食べるせいで席はよく埋まっている。

敷地は馬鹿みたいに広いくせにこういうところはケチって狭いんだ。

それでも、なんとか隅っこに空いてる席を見つけることができた。

俺がちょうど隅に座り、俺の前に瑞希さんが座る。

俺から見て瑞希さんの右に鈴音ちゃんが座り、更に桜華さんが座っている。俺の右には轟が座っていて、その右にシルヴィアがいる。

今日の昼食は天ぷら蕎麦。安くて美味い。文句無し。

瑞希さんは焼き魚定食。鈴音ちゃんはカレーライス。桜華さんは大盛りカレーライス。轟はカツ丼。シルヴィアはシーフードパスタ。

「いただきます」

各々が昼食を食べ始める。

ズズッと蕎麦をすする。あぁ美味しい。

やはり蕎麦は美味しい。蕎麦に限らず麺類は好きだが。

「轟、カツ一個くれ」

脂っこいものが欲しくなった俺は轟にトレードを申し込んだ。

「いいけどよ、やっぱり勝負の前はカツ丼だよな!」

「それで勝てたら苦労はしないっての」

「つれねぇなあ。んじゃ、えび天半分と交換だ」

俺はえび天を箸で半分に切り、轟のカツ丼の上に置く。

「おい!尻尾の方じゃねーか!」

さりげなく置いたのだが、やはりばれたか。

「どちらとは指定していない。尻尾には栄養が多いらしいぞ。それより早くカツをよこせ」

轟は箸でカツを持ち上げる。

「しょうがねぇなぁ。おっと、手が滑った」

誰がどう見てもわざとらしくカツを投下した。

それなりの位置エネルギーをもって蕎麦に飛び込んだカツは蕎麦のつゆをはねあげた。

「あっつ!なにすんだ!」

「手が滑ったんだよ!悪かったな!」

絶対わざとだろ、こいつ。

すると、俺の右前に座る鈴音ちゃんがポケットティッシュを渡してくれた。

「永時さん大丈夫ですか?兄さん、意地悪はよくないですよ」

「俺が悪いのかよ!」

轟が冤罪を主張するが、鈴音ちゃんは無視。

俺はティッシュで制服を拭く。まったく、シミになったらどうしてくれる。

「相変わらず鈴音ちゃんは優しいなぁ。どこかのお兄ちゃんと違ってな」

皮肉をたっぷり込めて。

「んだよ!何で俺だけ!」

「うるさい、静かに食え」

熱くなった相手は冷たくあしらうのが一番。

轟は面倒になったのか、1つため息をついてカツ丼を食べ始めた。

「ありがとう。鈴音ちゃん」

「いえいえ、どういたしまして」

気の利く後輩だぜ。

「鈴音ー。永時くんばっかりずるい。私の口も拭いてくれ」

桜華さんが鈴音ちゃんに甘えるように言う。

俺は別に拭いてもらってないけどね。

「仕方ないですね。どこですか?」

「ん」

桜華さんは指で口元を指差す。

仕方ないとは言いつつも、鈴音ちゃんは丁寧に桜華さんの口元をティッシュで拭く。

「相変わらず桜華さんは鈴音ちゃんにべったりだね」

いつものことだが、桜華さんは鈴音ちゃんに甘えすぎだ。俺に甘えてくれたって良いのに。

「そうか?」

意外そうな顔で桜華さんが言う。

自覚無いのかよ。

「シルヴィアにもいっぱい構ってあげてると思うけどな」

違った。末期だった。

「私としてはやめてほしいですけどね」

シルヴィアがやれやれといった感じで言う。

「この前は読書中に驚かされて、びっくりして本を落として折り目ついてしまいましたし」

「それは新しいのを買ってあげたじゃないか」

「ついでにいろんなお店にわたしを連れ回したのは覚えてますか?」

そう言われると桜華さんは口笛を吹いて誤魔化した。

心当たりがあるんだな。

「わたしも桜華のセクハラには困ったものだ」

瑞希さんが、ため息混じりに言う。

胸とか揉むもんね、桜華さん。

「やめろとは言わんが、スーツにシワがつくのは勘弁だ」

「じゃあ少しは反抗してみろよ」

「反抗の意思も起きないぐらい揉みくちゃにするけどね」

俺がそう付け足す。

「当然だろ。ねっとり素早くがモットーだからな」

どっちなんだよ。

「俺たちとしても、すごく居た堪れなくなるからやめてほしいんだが」

轟の意見に俺が首肯する。

居た堪れなくなるってのは、言わずもがな分かるだろ?

すると、桜華さんがウィンクする。

「オカズには困らないだろ?」

『そういう事をサラッと言わないでくれよ!」

俺と轟が声を合わせる。

いきなり何言ってるんだ。びっくりするだろ。

ほら、周囲の人たちが俺たちのこと見てるから。

俺は説得を諦め、蕎麦を食べることにする。

すっかりぬるくなってるし。でも美味しい。

「ふっ、随分と楽しそうにしているな。第七部隊」

突然、第三者の声が割り込んできた。

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