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十二話 《音》

俺、雨音轟はギターを片手に演習場に立っていた。

松永と向かい合って。

(どうしてこうなった...)

遡ること20分前。


午前9時ごろ。

「じゃあ、瑞希さん。松永さんのことよろしくお願いします」

「あぁ、任せてくれ。と言っても、そこまで苦労はしないだろうがね」

昨日の出来事を永時が瑞希さんに話し、瑞希さんは理事長にその話をしてくると言って出て行った。

「苦労はしないって言ってたけどよ、部隊の異動なんて前代未聞じゃねぇか?」

俺の一言に桜華さんが口を開いた。

「いや、前代未聞というほどではないさ。私がまだ

1年目の時一回だけあったと聞いたぞ。とはいえ、興味が無かったから誰かは知らないけどね」

それでも珍しいことに変わりはないか、と桜華さんは続けた。

「松永のやつ、今日は来てんのかな」

何となくそんなことを呟いて窓から外を見渡してみる。

だが、松永は居なかった。

まぁ、さすがに昨日の今日でまた木陰に居ることもないとは思うがな。

「珍しくしおらしいな。そんなに松永さんが気にかかるのか?」

永時が話しかけてくる。

「松永、部隊には顔を出してないって言ってただろ。だから、もしかしたら今も一人なのかもしれねぇなって思ってよ。昨日一緒に飯食ったんだから遠慮しないでここに来ればいいのにな」

「お前、それもう松永さんに惚れてるだろ」

「まだそんな気持ちじゃない。いや、なっちゃいけねぇ。半端な気持ちでオーケーしちまったら確実に松永を傷つけることになる」

永時は大きくため息をついた。

「まぁ別にいいけどな。これはお前と松永さんのことだからな。俺は口をだせる立場じゃないさ」

本当に気を使わせてるな。

「ギターでも弾くか。ギターの音色に松永がつられてくるかもしれないしな」

と、俺がギターを手にしようとした瞬間。

部屋の扉が勢いよく開かれた。

「雨音!」

そこにいたのは松永だった。

「お、松永じゃん」

どうした、という暇もなく松永が近づいてくる。

目の前ギリギリで止まり、目があう。

「な、何だよ」

間近で見る松永に思わずドキドキしてしまう。目つきは悪いけど綺麗な顔立ちしてるんだな。

「雨音!」

「だから何だって」

松永はただでさえ近いというのにさらにギリギリまで距離を詰めてくる。

「20分後、9時半に演習場に来い!」

「はぁ?いきなり何言ってん」

俺が言い切る前に松永が言葉を重ねる。

「いいから来いって言ってるんだ!じゃあな!」

そう言うと松永はズンズンと部屋を出て行った。

ポカンとした俺は永時と目を合わせて。

「俺、何か怒らせるようなことしたか?」

「さぁ...?」


そういうわけで演習場に突っ立っているわけだが。

永時たちは一応観戦室の方にいる。

「おい、松永。まさかこんなところでセッションする気じゃないだろうな?」

「そんなわけあるか!アタシがそんなにバカだと思ってんのか!?」

だから何でそんなに怒ってんだって。

「で、何なんだよ。まさか決闘しろとかそういうあれか?」

「...だよ」

「ん?何だって?」

「そうだよ!アタシと決闘しろ!」

俺は思わずため息をついた。

「何で?」

「さっき理事長に部隊を異動する許可証を貰った」

え?早すぎない?さっき瑞希さんが行ったばかりなんだが。

それは置いといて。

「よかったじゃんか。これからは同じ部隊だな」

「いや、まだだ。許可証にはまだハンコを貰ってない。条件を出された」

ハンコって。

「条件って?」

「アタシに第七部隊に入れるだけの実力があると証明すること」

「なるほどね。大体わかったよ」

あのオッサンも面倒なこと考えやがる。

「俺と、やるのか?」

「もちろんだ。ついでにアタシのベースも聴かせてやるよ」

松永は突然左手を前に突き出した。

すると、空間が歪み、そこから何かが出てきた。

「これがアタシの獲物だよ」

それはベースだった。

ずいぶんと世紀末なデザインだったが、ベースだった。

オーラによる武器創造か。

トランサーの戦闘スタイルには大きく2種類がある。

1つ、普通の武器や武装をオーラによって強化しているトランサー。これは永時があてはまるな。

2つ、オーラによって武器を創るトランサー。これが松永にあてはまる。

「それがお前の楽器か。かっこいいじゃねぇか」

「そうだろ?アンタのギターもいいセンスだな」

俺はギターを構える。

ちなみに俺のギターにストラップはついていない。あ、ストラップってのは肩にかけるやつな。それが俺のギターには、どうやら松永のベースにもついていない。いざという時に邪魔になるからな。

オーラを使って浮かせているので使用には特に問題はない。おそらく松永もそうしているのだろう。

「さて、じゃあ行くか?」

俺はピックをポケットから取り出した。

「あぁ、アタシのちからを聴かせてやるよ」

良いね。政宗のやつと戦うときでもここまで昂揚はしねぇ。

「お前の音、しっかり聴かせてもらうぜ」

楽器どうしの戦いは初めてだな。

「さぁ、行くぜ!」

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