ルチア、反論する
「きゃわっ! きゅーっ!」
エリクくんに褒められたと思ったのか、シロは羽をばたつかせて大喜びしだしました。爪が肩に食い込んだのか、マリアさんが痛そうな表情でシロを肩から引きはがします。
「シロ、痛いから。暴れちゃダメ! フェル、あたしもエリくんに賛成よ。暴れるか不安なら従えてみればいいのよ。殺したらそこでおしまいじゃない。殺さなかったら、なにか新しい可能性が開けるかもしれない。ね? お願いよ」
必死に言い募るエリクくんとマリアさんを見て、わたしも口を開きました。今までわたしが口を挟んでいいのかわからなくて躊躇っていましたけど、わたしだって魔物の命を無為に奪うのは反対なんです!
「わたし……っ、わたしも、反対ですっ。これ以上殺したくない。おとなしくなるなら、それでいいじゃないですか。”シャボン”が必要なら、いくらでも、どれだけでもかけます。だからお願いします、もう、これ以上殺さないで……!」
わたしはガイウスさんと二人きりで旅をしたときのことを思い出しました。無抵抗の魔物を目の前で切り捨てられるあの歯がゆさ。仕方ないって言い聞かせても、すごく苦くてつらかった。
わたしが能力を行使すればいいなら、いくらでも頑張ります。
たしかに魔物は敵です。お父さんだって、魔物がいなければ死ななかったかもしれません。でも、それでもあの光景を繰り返すのは嫌なんです!
「団長、殿下」
そのとき、わたしと同じく口を閉ざしていたセレスさんが動きました。
「俺からもお願いします。どうか、見逃してやってください」
そう言って深く頭を下げると、セレスさんはそのまま固まります。わたしも追従するように頭を下げました。
「……君たちは、本当に。あぁ、フェルナンド、これはお前の負けだね。魔物は放逐しよう」
「殿下!」
「シロのように無害化するのならば、わざわざ手にかけることもなかろう。だがマリア、その代わり君は早急に天晶樹を浄化してほしい。ルチア、君はずっとその効果が続くよう願って魔法をかけるように」