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ルチア、神殿へ向かう

 イヨルカの街でどうにかこうにか手紙を出した後、わたしたちはリモラの神殿へ向かいました。


 リモラは神殿の街です。街の中心に聖樹教の大神殿があり、そのまわりにお店や神官さんたちの家々があるという、一風変わった構成をしています。

 この街に、マリアさんを還せる方法があるかもしれないんです。わたしは高鳴る胸を抑えきれませんでした。

 見つかるでしょうか。見つかってほしいです。結果帰るにしろ帰らないにしろ、選択肢のない今よりきっといいはずですから。


「行こう。まずは大神殿に行って話を訊こう」


 セレスさんも同じことを考えていたのでしょう。ちょっと固い声音でそう言うと、わたしの手を取りました。


「はい!」


 そうして、わたしたちは神殿の門を敲いたのでした。


 ※ ※ ※ ※ ※


「古の聖女様のことですか?」


 現れた神官さんに騎士団章を見せて詳しい話を訊こうとしたところ、ひどく怪訝そうな顔をされました。


「はい、異世界から招かれたという聖女様は、どのようにして元の世界に戻られたのか、それが知りたいのです」

「そうですか……。ちょっと上の者を呼んでまいります。しばしお待ちを」


 そう告げると、困った様子で神官さんは神殿の奥へと向かってしまいました。


「セレスさん……大丈夫でしょうか」

「信じるしかない。きっと見つかるよ。聖女様のためだ。その方法が遺されているならば教えてもらえるまで乞おう」


 不安になってセレスさんを見上げると、力強く頷いてくれました。


「あなたたちが聖女様のお話を訊きたいという方たちですか?」

「あ、はい」


 続いていらしたのは、先ほどの神官さんよりもっと豪奢な神官服を身に着けた、年配の神官さんでした。神官位を表すストールの色は緋色で、相当高官だということが窺えます。


「聖女様がどのように元の世界に戻られたのか、その方法が知りたいのですが」

「そうですか……。ですが、詳しい手法はお教えできません。この神殿は天晶樹を祀る神殿ですが、古の聖女様を讃える神殿でもあります。かのお方の軌跡をお伝えすることはできますが、召喚については秘中の秘。いくらバンフィールド王国の騎士様といえども、軽々しくお教えすることはできないのです」

「そんな!」


 神官さんの答えに、思わず声が咽喉をついて出てしまいました。

 だって、そんなのってないです! この世界のために頑張ってくれているマリアさんに、せめて帰る方法をあげたいのに……それすらできないんですか!?


「どうしてもダメなんですか!?」

「お嬢さん、これを公にしては大変なことになるんです。今この世界にいらしている聖女様を無理やり還そうとする人が現れたらどうするんですか? とても危険なことなんです」


 神官さんは疲れたようにため息をつきました。


「先だってもエドアルド王太子殿下がいらっしゃったのですが……なんですか、そちらの国では還す方法は失われているのですか」

「!」

「殿下が!?」


 神官さんの口から思わない方の名前が飛び出して、わたしたちは驚愕の声をあげました。

 殿下がいらっしゃった。それはつまり、マリアさんたちがこの街に寄ったということです。


「招ぶだけ招んで還さないなど、言語道断です。聖女様に顔向けできないことなどすべきではな……」

「それはいつのことですか!?」


 噛みつくようなセレスさんの勢いに、神官さんはたじろいだ様子を見せましたが、咳ばらいをひとつすると親切にも教えてくださいました。


「お見えになったのは昨日の昼です。この街を発たれたのは今朝早くのことですが」

「馬を一頭、お貸し願えませんか? この騎士団章にかけて必ずお返しします。急ぐんです!」

「は、はぁ……」


 今朝この街を出たのなら、急げば追いつきます!

 マリアさん、今行きますからね!

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