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ルチア、セレスに文句を言う

「おや、見ない顔だね!」

「マスター、新しい入れたのかい?」


 ピアさんと入れ替わりでホールに出ると、すでに出来上がっているおじ様方に囲まれました。


「……臨時」


 おじ様方の問いかけに、ぼそっとカモラネージさんは返答を返しました。


「豊穣祈願祭中……短期」

「なんだぁ、とうとうピアの嫁入りでも決まったかと思ったのにさ!」


 渋い顔をして首を横に振るカモラネージさんに、おじ様たちはどっと沸きます。

 なんでしょう、カモラネージさんの喋り方はどことなくロッセラさんを思い起こさせます。元気にしてるでしょうか、皆。


「いらっしゃいませ!」


 しかし郷愁に駆られている余裕はありません。新たなお客様がいらっしゃったのを見て、わたしは声を張り上げました。ピアさんが戻るまで頑張らなくちゃ!

 首のストールを気にかけながら、わたしは注文を取るためにお客様に近寄りました。


 ※ ※ ※ ※ ※


「……てことがあったんですよ」

「話が違わない? ルチア、裏方だったよね?」

「話を逸らさないでください! わたしは怒ってるんですよ!」


 目まぐるしいバイトが終わった後、その日のお給金をいただいたわたしは、セレスさんと落ち合いました。

 そうして今に至ります。


 さすがのわたしだって限度があります。あんなに恥ずかしい思いをするなんて、もうまっぴらごめんです!


「わたしが世間知らずだからって、やっていいことと悪いことがありますよ! アレはダメです! もうやっちゃダメ!」

「…………」

「あんなことをしなくても、わたしはどこにも行きませんし、誰かに誘われることもありませんから! だからいいですね? もうやっちゃダメですよ!?」


 むしろ誘われる可能性はセレスさんの方が多いはずです。気を回さなくても、わたしにそういう声がかかることはありませんから!


 怒りのままに声を荒げると、セレスさんがしょんぼりと眉を下げました。思わずほだされそうになりますが、ここはぐっと我慢です。ここ最近のセレスさんは暴走度合いが激しすぎます。釘を刺しておかないとなんだか怖いです。


「お・へ・ん・じ・は!?」

「はい! ごめんなさい、以後気を付けます!」


 ようやくセレスさんから反省の言葉を引き出したわたしは、この話を終わらせることにしました。もう、蒸し返すのも恥ずかしいですし。


「さぁ、お手紙を出して、リモラに行きましょう」

「そうだね……うん、書きます。まずは辻馬車の停留所に行って、いくらで手紙を出せるか訊いてみよう。それから雑貨屋で書紙と封蝋買って、団長宛に手紙を書こう」


 代金……手持ちのお金で賄えるといいんですけど、大丈夫でしょうか。

 少しの不安を抱えながら、わたしはセレスさんと辻馬車屋まで向かいました。


 ※ ※ ※ ※ ※


 国営の辻馬車屋だったせいか、郵送料は思ったより安値でした。

 セレスさんはわたしたちが無事なこと、いったんリモラの神殿に立ち寄ってからフォリスターンへ向かうことを用箋に記すと、垂らした封蝋に騎士団章を刻印して封をしてハーシュの騎士団付けに送りました。もちろん、同じ内容のものを、フォリスターン近くにある騎士団駐屯地へ送ることも忘れてはいません。


「無事、つくでしょうか」

「こればっかりはわからないね……輸送途中に強い魔物に襲われて、護衛の騎士団員が全滅させられてしまえばどうしようもないし。でも、バチスの騎士は強いよ。大丈夫、きっと皆のもとへ知らせはつくさ」


 手紙を送る費用は稼げましたが、自分たちが辻馬車に乗れるほどはありません。リモラ行きの馬車が来るのは明後日とのことなので、わたしたちはそれまで改めて旅費を稼ぎ──お灸を据えた成果があったのか、今度はセレスさんも無茶はしませんでした──、どうにかこうにかその馬車に乗ることができたのでした。

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