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ルチア、聖女に思いを馳せる

 詰め寄るわたしに、ロミーナさんは静かな声で答えました。


「リモラの神殿で召喚された聖女様は、天晶樹の浄化を終えると、同じ神殿から元の世界に帰ったそうだよ」

「同じ……神殿」


 つまり、マリアさんが元の世界に帰るには、最初の場所──バンフィールド王国の王城に戻らなければいけないんですね。

 すごく胸がドキドキしてきました。まだちゃんと方法はわかっていませんが、それさえわかれば……。

 マリアさんとお別れするのはさみしいですが、この世界のために無理やり連れてきてしまった彼女を、元いた世界に戻すためにはそのやり方を探さないと!


「詳しい方法ってわかってるんですか!?」

「方法? さぁ……そこまでは知らないねぇ。隊長様とも話したんだけどね、神殿に行けばわかるんじゃないのかって。それにしても、あんたたちの国じゃ、聖女様をお返しする作法も知らないんだねぇ。てっきり招ぶ人は皆知ってるのかと思ってたよ」


 どう……なんでしょうか。殿下たちはマリアさんを返す方法を知っていて、その上で帰れないと言っているのでしょうか。

 わかりません。脳裏に浮かぶのは、マリアさんたちと別れたあのときの光景です。殿下はマリアさんをどう思っているのかも結局のところよくわかりませんし、なぜ”聖女”にこだわるのかもよくわかりません。


「ただいま戻りました……」


 殿下のことを考えていたら、背後のドアが開いてセレスさんが戻ってきました。


「!」

「あっ……」


 お互いに顔を見合わせた瞬間、顔を赤らめます。ま、まともに顔を合わしづらいですっ。


「おや、ご苦労さん。少しは頭は冷えたかい?」

「……はい。お心遣い、痛み入ります」


 じろりと横目で冷たいまなざしをくれるロミーナさんに、セレスさんは苦い表情で頷きます。


「まったく、はじけるのもいい加減におしよ。両想いになった瞬間がっついてどうすんだ。これだから男はいけないね。理性ってもんはないんかね」

「返す言葉もありません」


 ロミーナさんのなじるような言葉にはっとなります。両想い。やっぱり夢ではなかったというのは間違いないみたいです。

 でも……なんでそれをロミーナさんが知っているんでしょうか。

 疑問に思ったわたしがロミーナさんを見ると(セレスさんはちょっと恥ずかしくて見れませんでした!)、視線に気づいたロミーナさんはケタケタとおかしそうに笑いました。


「そんなきょとんとした表情かおしなさんな。嬢ちゃんを運んできた隊長様を問い詰めたのさ。しっかしまぁ、よく抜け出したねぇ。さっぱり気づかんかったよ。抜け出して、魔物を退治したかと思えば隊長様と恋人になって、挙句口付けられて倒れるとか、嬢ちゃん、昨夜は濃い夜だったねぇ!」

「や、やめてください……」


 改めて言われると、恥ずかしさマックスですよ! やめて~。ほんとに、逃げ出したいくらいです!

 頭を抱えたわたしに、ロミーナさんはセレスさんをけしかけてきます。


「ほら、隊長様。言いたいことがあるんだろ。さっさと済ましちまいな。終わったらエツィオのとこに行くよ」

「エツィオ?」

「このシェレゾの村長だよ。あんたたち、旅費や支度品に困ってんだろ。村中掻き集めればあんたたち二人分くらい捻出できるよ」


 村長さんに協力をお願いするってことでしょうか。あまりよくわからないまま、わたしは頷きました。


「ルチア」

「!」


 おずおずといった様子で、セレスさんはわたしの前までやって来ます。


「ごめん……昨夜は。あんなに無理やりするつもりはなかったんだけど、つい浮かれて調子に乗りました。本当にごめん!」

「えっ、あっ……いえ、その」

「もう焦って先に進もうとはしないから、許してもらえると嬉しい。もう無理強いはしないから。それとも……もう、遅い?」


 といいますか、なんでセレスさんは謝ってるんでしょうか。

 理由がわからず一瞬首をひねりかけましたが、そういえば呼吸ができなくて気を失ったのを思い出してようやく合点がいきました。


「謝ることないですよ。なんかうまく息が吸えなくて。わたしこそびっくりさせてしまってごめんなさい。眠気もあってそのまま寝ちゃったみたいです」

「吸えないって……嬢ちゃん、なんで息が吸えなかったのさ?」

「わかんないです……吸っても吸えなくて」

「あんたねぇ……息っていうのは、吐かなきゃ吸えないよ? ちゃんと吸って吐いてたかい?」

「あっ」


 ロミーナさんの指摘に目から鱗が落ちるようでした。そうですね、吐かなきゃ吸えないですよね。わたし、息吐いてましたっけ? 記憶が曖昧でよくわかりませんが、停めてたような気もします。


「まぁいいさ。さぁ、嬢ちゃんも食事を終えたことだし、そろそろ行こうじゃないか」

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