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ルチア、マリアと調理実習に挑む

 その日はマリアさんの希望通り、行けるところまで行こうとシュノー山の麓まで向かいました。

 イーレスの村からシュノー山までは結構な距離があったので、宿泊せずに進んだことで大分距離が稼げたように思えます。


「今日はここで天幕を張りたいと思います。天幕を張るまでこちらでお待ちください」

「あ、わたし手伝います!」


 団長様が声をかけにいらっしゃったので、わたしはお手伝いに出ることにしました。


「あたしも手伝おうかな」


 すると、マリアさんまでもが名乗りを上げたのです。

 わたしの申し出はともかく、マリアさんの申し出は想定外だったのか、団長様がギョッとしたような顔になりました。


「なによ、フェル。あたしだって手伝えることはあるわよ。……多分」

「いえ、ですがそのドレスでは汚れてしまいますし」

「ルチアのシャボンがあるでしょ」


 たたみかけるマリアさんに、団長様は困った様子です。


「そしたらマリアさん、わたしと一緒に夕食の準備をしましょう」

「そうですね、それがいいかもしれません。ですが、火には気をつけてください」

「はーい」


 力仕事はセレスさんたち男性陣に任せて、わたしたちは別のお仕事をしましょう。

 わたしはマリアさんと一緒にエリクくんが熾してくれた焚き火の側へと行きます。ありがたいことにお鍋なんかをかけられるようにすでに準備されていますね。


 水の魔石が嵌められたポットからお鍋にお水を注いでお湯を沸かし始めると、マリアさんがワクワクとした様子で覗き込みました。


「調理実習みたいね」

「調理実習?」

「うん。料理の練習って言えばわかる? 学校でやるの。あたしさぁ、結構得意だったんだよ」


 マリアさん、学校に通われるくらい優秀なんですね。さすがです!

 こちらでは学者さんになるくらい優秀な人がダル・カント王国にある学びの塔へ行くか、魔法の才がある人がバンフィールド王国のアカデミアで学ぶかなので、学校というのは本当に特殊な存在なんですが、異世界も同じなんでしょうか?


「今日はなに作るの?」

「食材や調味料はあるものを使うし、オーブンなんかはないので、あまり凝ったものは作れないんですが……」


 わたしたちはとりとめのない話をしながら、夕食の準備を進めました。


「ねぇねぇ、魚獲ってきたから、これ焼いて〜!」


 タマネギの皮を剥いていると、エリクくんがそう言いながらやってきました。その手にはお魚が数匹握られています。


「それ、どうしたの?」

「向こうに川があったからさぁ、ちょっと雷落としてきた」

「感電ってあぶないわね! どうして釣りとか、もっと穏便なやり方しないのよ!」

「なんでそんな面倒なことしなきゃいけないんだよ。ボクは魔法使いだよ!?」

「他に人が入ってたら死んでたでしょ!」


 憤慨するマリアさんに、エリクくんは唇を尖らせました。


「雷の衝撃で浮いてくる魚を獲るだけだよ! 他に人なんていないって。落としても効かないときもあるしさ」

「ひっどい方法ねぇ」

「合理的って言ってよ。釣りでのんびり待ってるよりよっぽど獲れる確率は高いよ」

「危ないのには変わらないでしょ。第一、あたし魚触れないし捌けないし」

「ルチア、できる? もうずっと魚食べてないから食べたいんだ。塩振って焼くだけでいいからさ!」


 お魚を渡されそうになったマリアさんは、慌てて両手をバツにして拒否をします。

 マリアさんに断られたエリクくんは、お魚を握りしめたまま、上目遣いでわたしを覗き込みました。


「エリくんさぁ、自分で焼かないの? 火魔法得意なんでしょ?」

「魔法で焼いたら消し炭になるよ。むしろ炭すら残らないかも」

「調整できないとか、得意魔法って言わなくない?」

「料理を魔法でやるとか、聞いたことないから。ん〜、でも新しいかも。アカデミアに戻ったら検証するのも面白いかな……って、流されるところだった! 魚! 焼いてよ、ねぇ!」

「あ、はい」


 言い募られて、思わず受け取ってしまいました。

 今日のメニューはパスタの予定だったので、開いてパン粉焼きにでもしましょうか。トマトがあればまた違う食べ方もできたんですけど、残念ながらトマトはありません。


「パン粉焼きでも構いませんか?」

「うん! 魚料理ならなんでもいい! あ、豆は入れないでね!」


 セレスさんが好きなお豆ですが、エリクくんはお嫌いなようですね。


「あたし、魚の下ごしらえはできないから、パスタの方やるね。アーリオオーリオでいいんでしょ?」


 そう宣言すると、マリアさんは皮を剥いたタマネギをスライスしだしました。得意と言っていただけあって、なかなかの包丁捌きです。

 貴族の方は料理などやらないので、マリアさんができるのが不思議に思えますが……マリアさんの国では違うのですね。調理実習なるものもあると言っていましたし。

 異世界の文化って、こちらとは違うことも多々あって面白いです。

別途番外編も更新しました。

よろしければそちらも覗いてやってくださいませ。

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