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ルチア、複雑な気持ちになる

「そこ、2人でなにやってんのさ」


 友情を確かめ合っていたわたしたちに、エリクくんの呆れたような声が投げかけられました。


「いや、言ってやんな、ちびっこ。おもしれーとこだから」

「兄さん、なんでもかんでも面白がって進めるのはどうかと……セレスティーノ殿が固まってますから」

「だからおもしれぇんだろうが!」


 レナートさんの言葉にセレスさんに目をやると、たしかにセレスさんは眉間にしわを寄せてわたしたちを見てました。

 そうでした、セレスさんはマリアさんのことが……好き、かもしれなくて。

 あれ、でもセレスさんなら元気になったことを喜びそうな気もするんですが、なんでこんな反応なんでしょう?


「セレスさん?」

「ふふん、セレス。残念だけど、1番は譲ってあげられないから」


 勝ち誇ったようなマリアさんは、腰に手をやるとセレスさんに向かって胸を張りました。


「あたしを袖にした報いを受けるがいいわ!」

「マリアさん、誤解です! セレスさんは」

「嬢ちゃん、黙ってろ」

「そうそう、こういうのは黙って見るのがいいんだよ」


 間に入ろうと身を乗り出すと、ガイウスさんとエリクくんに肩をつかまれました。


「悔しい? 行動しないあんたが悪いのよ! つまり自業自得。ははっ、あたしに自業自得言われるようじゃ終わりよねぇ」

「聖女様、あなたは……」


 楽しそうに高笑うマリアさんに、セレスさんが頭を抱えています。

 ごめんなさい、セレスさん。もしかしなくてもわたし、セレスさんの恋敵になっちゃってたりしますか⁇

 ここは後でセレスさんのいいところをマリアさんに……ああ、でもそれで2人が両想いになったら、わたし、どうしていいか。ちょっとすぐには祝福できる気がしません。


「ルチア、あの2人は気にしないで。それよりさぁ、ボクおかわりにきたの。まだある?」

「あ、それは……あります、けど」

「私は片付けを。ルチア嬢はもう召し上がりましたか? まだならエリク殿のおかわりを注ぐのも私がやりますから、兄さんたちと食べていらしてください」

「あ、はい」

「あ、ニンジン入れないで! ジャガイモたくさんがいいな!」

「ちびっこ、好き嫌いしてるといつまでもちびっこだぞ」

「クマになるよりいいよ〜だ!」


 エリクくんとガイウスさんの組み合わせは、誰よりもにぎやかです。ガイウスさんといると、エリクくんはのびのびしてるというか、年齢通りに見えるのが不思議ですね。やっぱりガイウスさんの人徳でしょうか?


「さあ、どうぞ」

「ありがとうございます」

「じゃ、さっさと食うか。国境に向かうんだろ、さっさとしねぇとな」


 レナートさんから渡された器を手にすると、わたしはガイウスさんとエリクくんの方を向きました。そのついでにちらりとセレスさんとマリアさんのことを見ると、セレスさんが即座に気づきます。


「ルチアもこれから? それなら一緒に……」

「ルチアぁ、あたしと一緒に食べよ! ね!」

「聖女様はいつも一緒じゃないですか」

「当たり前でしょ。ルチアはあ、た、し、の! 悔しかったら頑張ってみればぁ?」


 喧嘩するほど仲がいいっていいますし、これは……仲良くなってる、のでしょうか?

 復活してからのマリアさんは、セレスさんに対しての態度がおかしいといいますか、とても気安いものになっている気がします。セレスさんも前より楽しそう。


「人気もんだな、嬢ちゃん」


 人気者……とはなにか違う気もします。

 嫌われてはないんでしょうが、この場合、どう思われてるかよくわかりません!

 困ったわたしは、ガイウスさんを仰ぎました。


「ガイウスさぁん……」

「そんな困った顔すんな。ったく、昨日気を回してやったっていうのに、隊長サンは日和やがったな、これは」

「ひよ……?」

「嬢ちゃんは気にすんな。オレと隊長サンとの話だ。聖女サマと隊長サンはほっといて、ほら行くぞ」

「ルチアはボクとクマとの間にいればいいよ。仲良し2人組はほっとこ〜」


 仲良し2人組。

 エリクくんの一言が胸に突き刺さります。やっぱりセレスさんとマリアさんは仲良しに見えますよね。セレスさんとしてはいい傾向……なんでしょうが。

 いえいえ、好きな人の恋路を応援してあげられないのは、狭量すぎますよね。セレスさんには笑顔でいてほしいです。

 でも、やっぱり目の前で仲良くされてるのを見るのはツライといいますか、その……。


「気にすんな。嬢ちゃんが気にするような関係じゃねぇから、あれは」

「え、いえ、わたしは……」

「しかめっ面してたぞ、珍しい」


 こつんと眉間を突かれて、わたしは自分がおかしな表情をしていたことに気づきました。


「若えもんはいいねぇ。嫁さんが恋しくなるわ」

「クマの奥さんもクマなんだろ」

「バッカいえ、オレの奥さん美人だぞ。びっくりするほど気ぃ強えけどな!」


 結局、わたしはガイウスさんとエリクくんに挟まれて朝食をとり。

 マリアさんとセレスさんはわたしの真向かいで、2人お話しながらごはんを食べたのでした。

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