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ルチア、セレスに詰問される

「ルチア、どういうことなんだ?」


 セレスさんはいつものにこやかな表情ではなく、ちょっと硬い顔でわたしを覗き込みました。そっか、事情は話してませんでしたよね。

 わたしはつかまれた腕をそっとほどきました。そのまま1歩距離を置こうとしましたが、今度はほどいた手首をつかまれて動けなくなりました。そんなに聞き出したいんですか、わたしが選ばれた理由。まぁ、たしかに洗濯婦が同行者になるなんて、前代未聞でしょうしね。気になりますよね。


「お城が襲われたんです」

「なっ……!」


 ルフたちの襲撃を伝えると、セレスさんが顔色をなくしました。

 そういえば、あのときわたしはセレスさんはお城にいると思い込んでいたので、今ちょっと複雑な心境です。そりゃ会えないはずですよね……いなかったんですもん。


「避難してたらルフに襲われて、つい魔法シャボンを使ったらおとなしくなって……。それで、フェデーレさんとアスカリさんに頼まれて、オーガの群れにもかけたら、何故か帰っちゃいました。それで、その効果を知った陛下の命令で、ガイウスさんと聖女様のお手伝いに来たんです」

「フェデーレ、さん?」

「はい。セレスさんを心配してましたよ?」


 セレスさん、慕われてるんですよ。いい部下をたくさん持ってらっしゃって、よかったですね。

 てっきり喜ぶと思ったのに、セレスさんの反応は違いました。


「ブリッツィ……許さん」

「なんでですか!?」


 予想外の反応に、焦ります。なんで怒るんですか!?


「でもルチア……君が無事でよかった。君になにかあったら……」

「お城は大丈夫でしたよ! 怪我人はいらっしゃったらしいですけど、亡くなった方はいらっしゃらなかったとアストルガ副団長が」

「うん……そっか、うん。よかったよ、それは……。頑張ったね、ルチア」

「はい、本当によかったです!」


 褒められちゃいました!

 わたしはなんだか嬉しい反面照れ臭くて、セレスさんを真正面から見れなくなりました。

 そうですよ、頑張ったんですわたし。頑張って、よかったなぁ……。


「でも、騎士でも兵士でも魔法使いでもない君が送り出されるなんて、一体陛下はなにをお考えになってるんだろう。護衛の騎士は初めからあいつだけなの? ……チッ、なんで1人しかつけないんだよ。伝言頼む暇あったら、送れよあいつら! ルチア、ここに来るまでなにもなかった!?」

「はい、魔物退治の練習をしたくらいで、ガイウスさんのおかげで特になにもなかったです」

「そうか……そうだ。2人きり、だったんだ」

「そうですよ?」

「あの熊になにもされなかった!?」

「おいおい、そいつは聞き捨てなんねぇな、隊長サンよぉ。オレはルチアの護衛だよ。アンタと違って、な」

「っ!!」


 ガイウスさんが楽しそうに話に入ってきました。なんかもう、めちゃめちゃ楽しそうです。セレスさんと仲良しなのかな?


「ねぇねぇセレスぅ、見て見て、ドレス綺麗になったの! 嬉しい〜」

「……よかったですね、聖女様」

「もちっと喜んでやれや、聖女様の護衛の隊長サンよぉ」

「うるさい熊!」


 あ、聖女様がガイウスさんを押しのけるようにしてやってきました!

 セレスさんの腕にしがみついた聖女様に、ガイウスさんが心底楽しそうに大笑いしています。


「ねぇ、ルチア! さっきの魔法も1回見せて! あ、その前に魔力計らせて!」

「ああ、兄さんが新しいオモチャ見つけて喜んでますね……」


 セレスさんと聖女様、そして2人を見て爆笑するガイウスさんを見ていたら、エリクくんとガイウスさんの弟さんがやってきました。

 細身で長髪な弟さんは、ガイウスさんとあまり似てませんね。ガイウスさんのおひげを剃ったら似るんでしょうか?


「ルチアさん、私はレナート・カナリスと言います。あそこの熊の弟です。どうか気軽にレナートとお呼びください。旅の間、兄がなにか失礼をしませんでしたか?」

「ルチア・アルカです。ガイウスさんには色々よくしていただきました。一緒に来てくれたのがガイウスさんでよかったです!」

「そうですか、それはよかった。あの通り兄はクセがあるので、相容れない人はたくさんいるんですが……貴女が気にされない方でよかった。あのセレスティーノへの弄り方から見て、相当気に入られてますからね、貴女」


 そう言うと、レナートさんは目を細めて笑いました。あ、笑った目元がガイウスさんとよく似ています! やっぱり兄弟なんですね。


「ねぇ、レナート、そろそろ話終わらせて? ボクに代わってよ! ね、ルチア。そしたらこれ咥えて?」


 エリクくんが差し出してきたのは……あ、コレ見たことありますよ! これは……。


「魔力回復薬なら飲みませんよ!?」

「あ、アレ飲んだんだ! 大丈夫だよ〜。今回は計るだけだから! 計って、魔法使って、また計るの。研究するにはデータって大切だからね!」


 にっこり可愛く笑ってわたしに計測器を渡すと、エリクくんは手帳とペンを取り出しました。


「さ! 早くルチア!」

「エリク、貴方ルチアさんにまで迷惑かける気ですか? この前聖女様にも嫌がられたばかりでしょう?」

「だって、2人とも見たことない魔法使うんだよ? データ採らないでどうすんのさ!」

「これだから研究馬鹿は……」

「お褒めにあずかり光栄だよ!」

「褒めてませんよ」


 ガイウスさんとセレスさんがいいコンビだなあとさっき思いましたが、レナートさんはエリクくんといいコンビなようです。

 ぱっと見似てないけど、やっぱり似た者兄弟なんですかね……。

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