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ルチア、セレスの正体を知る

 最初にわたしたちの姿に気づいたのは、眼鏡をかけた長い髪の騎士様でした。


「兄さん!」


 兄さん⁇


 わたしは思わずガイウスさんを振り返りました。

 ガイウスさんはいつもと変わらない様子で、ひらひらと手を振ります。


「お〜、レナート。来てやったぞ〜」


 ガイウスさんにレナートと呼ばれた騎士様は、まわりの方々に声をかけると、こちらへ走ってらっしゃいました。

 そしてもう1人。金の髪を揺らしてこちらへ駆け寄ってきた騎士様が--って、ええ!?

 わたしは思わず目をこすりました。

 だってその人は--


「セレスさん!?」


 そう、セレスさんだったのです。

 え、なんで? アールタッドにいるんじゃ⁇

 一瞬パニックになりましたが、目の前にいるのは間違いなくセレスさんです。


「ルチア、なんで君がここに!?」


 あっという間に目の前までやってきたセレスさんは、馬の上で硬直していたわたしに手を差し出しました。

 条件反射で(慣れって怖いですね!)その手を取ると、そのままするりと馬から降ろされます。


 改めてまじまじと目の前の人を確認しましたが、やっぱりどう見てもわたしの知ってるセレスさんで間違いないです。

 セレスさんがここにいるということは、帰らされた騎士様や兵士の方の中にはいなかったということで。つまり。


 そこまで考えて、鈍いわたしにもようやくわかりました。


 なんで“竜殺しの英雄”について訊かれたセレスさんが驚いたのか。

 なんでフェデーレさんたちがおかしな顔をしたのか。

 なんでそれを聞いていたガイウスさんが笑い出したのか。


 そりゃそんな反応しますよね。

 だって、わたしの言っていた“セレスさん”が、第3隊の隊長であり、世間で“竜殺しの英雄”と謳われている、セレスティーノ・クレメンティ様その人だったんですから!


 ざあっと音を立てて血の気が引くのがわかりました。

 だって、まさか“竜殺しの英雄”だなんて思わなかったんです。元は平民出身とはいえ、世間に名高く騎士団の隊長まで務められる方と、まごうことなき平民なわたしでは、ちょっと釣り合いが取れません。


「ルチア?」


 いつも通りのセレスさんに、思わず泣きたくなりました。

 “セレスさん”は気にしないと思いますが、ここはお城の裏庭ではないんです。王太子殿下もいらっしゃるこの場で、いつものように気安くお話してもいいものか、わたしには判断がつきません。

 わたしと同じ人間だと笑ったセレスさんは、きっといつも通りの態度を望むのでしょう。もちろんそれはわたしも一緒です。いつもみたいに話したい。今更他人行儀に距離なんて取りたくないです。

 でも、あれはある意味プライベートな時間での話で、こういった公に近い場でどういう態度を取ればいいのかなんて、わたしにはわかりませんでした。


「おい、ルチア」

「……っ、あ、はい!」


 ぽんとガイウスさんに肩を叩かれて、わたしは正気に戻りました。うわ、まだセレスさんと手を繋いだままでしたよ! 名残惜しい気持ちもありますが、ここは離すのが正解ですよね。


「ルチア……」

「第3隊のやつらから、伝言もらってんだろ?」

「そうでした! あの、セレスさん」


 困ったような顔のセレスさんと、わたしは向き合います。皆さんの気持ち、ちゃんと伝えなくちゃ。


「皆さんから伝言です。“あなたの帰りを、皆待っています”、だそうです。……もう! ガイウスさん、なんで笑うんですか!」


 背後で爆笑するガイウスさんを軽く睨むと、お腹を抱えたまま、ガイウスさんはわたしの頭をぽんぽんと叩きました。


「忘れてんぞ、ルチア。ソレに加えて“覚悟しといてくださいね”、だとよ、隊長サン。大変だなあ!」

「……ガイウス・カナリスか」

「他の隊の人間の顔と名前まで覚えてるとは、さすが英雄サンだな」

「揶揄はいい。何故ここに彼女を連れてきた」


 セレスさん、なんだか怒ってるみたいです。やっぱりわたしがここに来たのが原因……ですよね。


「ちょっと、セレス! 誰よその人たち!」

「へぇ、マリアの新しい侍女?」

「また馘にされるのがオチじゃん〜! 聖女サマがいらないって言ってんだからさ、連れてこないのがお互いのためだよ」

「ガイウス、きみたちは何故ここに? このお嬢さんは?」


 気づかない間に、聖女様たちもこちらへ来られたようでした。


「オレらは王命で団長たちを追っかけて来たのさ。彼女はルチア。聖女サマと似たような力を持つお嬢さんだ」

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